韓国語の二人称【完全攻略】너, 당신, 그쪽, 자기야…状況別「あなた」の正しい使い方と夫婦の呼び方
韓国語で相手を指す「あなた」。日本語と同様、韓国語にも相手や状況によって使い分けるべき多様な二人称が存在します。英語の「You」のように一つで済まないため、韓国語学習者が頭を悩ませるポイントの一つです。しかし、これらの二人称を正しく使いこなせるようになれば、相手との距離感を適切に保ち、より円滑で自然なコミュニケーションが可能になります。この記事では、友達に使う「너 (ノ)」から、夫婦間で使う「여보 (ヨボ)」「당신 (タンシン)」、さらにはビジネスシーンでの呼び方まで、韓国語の二人称を徹底解説!8000字を超えるボリュームで、あなたの疑問を解消し、二人称マスターへの道をサポートします。
目次
なぜ韓国語の二人称は難しい?日本語との違いと敬語文化の理解
韓国語の二人称が日本人にとって難しく感じられる主な理由は、日本語以上に厳格な敬語文化(上下関係や年齢、親密度に基づく言葉遣い)が背景にあるからです。日本語でも「あなた」「君」「お前」などを使い分けますが、韓国語ではさらに細かく、相手の社会的地位や自分との関係性、場面のフォーマル度によって適切な表現を選ばなければ、失礼にあたったり、相手を不快にさせてしまう可能性があります。
例えば、日本語の「あなた」は比較的広範囲に使えますが、韓国語で直訳にあたる「당신 (タンシン)」を目上の人に使うと、非常に失礼になるケースがほとんどです。また、親しくない相手にいきなり「너 (ノ)」(君、お前)を使うのは論外です。
韓国では、儒教文化の影響が言語にも色濃く反映されており、年齢が一つ違うだけでも言葉遣いが変わることが珍しくありません。そのため、相手を直接指す二人称代名詞の使用を避け、代わりに相手の名前や役職名、あるいは間接的な表現を使うことが好まれる傾向にあります。
二人称選択の重要ポイント:
- 相手の年齢(年上か、同い年か、年下か)
- 相手の社会的地位(役職、先生など)
- 自分との親密度(初対面、知人、友人、恋人、家族など)
- 会話の場面(フォーマルか、インフォーマルか)
これらの要素を瞬時に判断して適切な二人称を選ぶのは、上級者でも難しい場合があります。しかし、基本的なルールと各表現のニュアンスを理解すれば、大きな失敗は避けられます。まずは、最も基本的な二人称から見ていきましょう。
【基本の二人称】友達・年下に使う「너 (ノ)」徹底解説
韓国語で最も基本的、かつカジュアルな二人称が「너 (ノ)」です。これは、日本語の「君」や「お前」に近いニュアンスを持ちますが、使用できる相手が限定されているため注意が必要です。

親しい友達同士なら「너 (ノ)」で気軽に話せます
「너」の正しい使い方とニュアンス – 「君」「お前」どっち?
「너 (ノ)」は、主に以下のような相手に対して使います。
- 自分と同い年の親しい友人
- 自分より明らかに年下の相手(弟妹、後輩など)
- 非常に親しい間柄で、お互いにタメ口(반말 – パンマル)で話すことが許容されている年上の相手(ごく稀なケース)
日本語に訳す際、「君」とすると少し上品すぎる印象になり、「お前」とすると状況によっては乱暴に聞こえることがあります。「너」が持つ基本的なニュアンスは、対等もしくは自分より下の立場の人に対する、親しみを込めた(あるいはぞんざいな)呼びかけです。そのため、文脈や話し手の口調によって「君」「お前」「あんた」など、訳し方が変わってきます。
絶対に「너」を使ってはいけない相手は、初対面の人、目上の人、親しくない同い年の人、ビジネス関係者などです。これらの相手に「너」を使うと、非常に無礼で常識がないと見なされます。
ポイント: 韓国では、年齢が非常に重要視されます。たとえ同級生であっても、早生まれなどで学年が同じでも実際の年齢が一つ上というだけで「너」を使わず、敬称(형/ヒョン – 兄さん、누나/ヌナ – 姉さん、언니/オンニ – 姉さんなど)で呼ぶのが一般的です。親しくなるまでは、相手の年齢や立場がはっきりするまで「너」の使用は避けるのが無難です。
助詞で変化!「너는/너를」と間違いやすい「네가(니가)/네(니)/너의」
「너」は、後ろに付く助詞によって形が少し変わることがあります。特に「~が」と「~の」の形は、一人称の「私」の形と発音が似ているため、注意が必要です。
日本語 | 韓国語 (基本形) | 発音 | 備考 |
---|---|---|---|
君は / お前は | 너는 (ノヌン) / 넌 (ノン) | ノヌン / ノン | 넌は너는の縮約形 |
君が / お前が | 네가 (ネガ) | ネガ | 「私が」(내가)と発音が同じため、会話では니가 (ニガ) が多用される。 |
君に / お前に | 너에게 (ノエゲ) / 너한테 (ノハンテ) | ノエゲ / ノハンテ | 너한테はより口語的 |
君を / お前を | 너를 (ノルル) / 널 (ノル) | ノルル / ノル | 널は너를の縮約形 |
君の / お前の | 네 (ネ) | ネ | 「私の」(내)と発音が同じため、会話では니 (ニ) が多用される。文章では너의 (ノエ)も使う。 |
君と / お前と | 너와 (ノワ) / 너랑 (ノラン) | ノワ / ノラン | 너랑はより口語的 |
特に重要なのが、「네가 (ネガ)」と「네 (ネ)」です。
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네가 (ネガ) – 君が/お前が:
これは、一人称の「私が」を意味する「내가 (ネガ)」と発音が全く同じになってしまいます。これでは会話でどちらを指しているのか混乱が生じるため、実際の会話では「니가 (ニガ)」という発音が圧倒的によく使われます。「니가」は元々一部の方言でしたが、区別のしやすさから標準語の会話でも広く浸透しました。文章で書く場合は「네가」が正式ですが、歌詞や親しい間柄のメッセージなどでは「니가」もよく見られます。 -
네 (ネ) – 君の/お前の:
これも、一人称の「私の」を意味する「내 (ネ)」と発音が全く同じです。そのため、会話では同様に「니 (ニ)」という発音がよく使われます。例えば、「君の物」は「네 것 (ネ コッ)」より「니 것 (ニ コッ)」または「니 꺼 (ニッコ)」と言う方が自然に聞こえます。文章では「너의 (ノエ)」という形も使われますが、会話ではあまり使われません。
これらの発音上の区別は非常に重要なので、しっかり覚えておきましょう。
「私が」は「내가 (ネガ)」、「私の」は「내 (ネ)」。
「君が」は「네가 (ネガ)」だけど会話では「니가 (ニガ)」、「君の」は「네 (ネ)」だけど会話では「니 (ニ)」。
最初は混乱するかもしれませんが、慣れれば自然と使い分けられるようになります。
「너」を使ったリアルな例文集 – 日常会話でこう使う!
「너」を使った実際の会話例を見てみましょう。友人同士や姉弟間など、親しい間柄でのタメ口(반말 – パンマル)の会話です。
例文1:友達との会話
A: 너 어제 뭐 했어? (ノ オジェ ムォ ヘッソ?)
訳:君、昨日何してたの?
B: 나? 그냥 집에서 영화 봤어. 너는? (ナ? クニャン チベソ ヨンファ ブァッソ. ノヌン?)
訳:私? ただ家で映画見てたよ。君は?
例文2:持ち物について (니/내の区別)
A: 이거 니 우산이야? (イゴ ニ ウサニヤ?)
訳:これ、君の傘?
B: 아니, 그건 내 거 아닌데. 아마 네가 잘못 안 거 아냐? (アニ, クゴン ネ ッコ アニンデ. アマ ニガ チャルモッ アン ゴ アニャ?)
訳:ううん、それ私のじゃないよ。たぶん君が勘違いしたんじゃない? (※Bは会話で「君が」を「니가」と言っている)
A: 아, 미안! 그럼 이건 누구 거지? 너랑 같이 온 친구 거 아냐? (ア, ミアン! クロム イゴン ヌグ コジ? ノラン カチ オン チング ッコ アニャ?)
訳:あ、ごめん!じゃあこれ誰のだろう?君と一緒に来た友達のじゃない?
例文3:弟に対して
누나 (姉): 야, 너 숙제 다 했어? 너한테 할 말 있는데. (ヤ, ノ スクチェ タ ヘッソ? ノハンテ ハル マル インヌンデ.)
訳:ねえ、あんた宿題全部やったの?あんたに話があるんだけど。
동생 (弟): 아직. 왜? 무슨 일인데? (アジク. ウェ? ムスン イリンデ?)
訳:まだ。なんで?何かあったの?
このように、「너」は親しい間柄では頻繁に使われます。韓国ドラマや映画の日常シーンでもよく耳にするので、どのような状況で、どのような口調で使われているか観察してみると、ニュアンスが掴みやすくなるでしょう。
【丁寧な二人称】状況で使い分ける「あなた」の多様な表現
「너」が使えない相手、つまり初対面の人、目上の人、ビジネス関係者などに対して「あなた」と言いたい場合、韓国語では状況に応じて様々な表現を使い分ける必要があります。日本語の「あなた」ほど万能な言葉はなく、直接的な二人称代名詞の使用を避ける傾向があることを念頭に置きましょう。

ビジネスなどフォーマルな場では、役職名や間接的な表現が好まれます
「당신 (タンシン)」は万能じゃない?夫婦間・書き言葉・喧嘩での正しい使い方
韓国語学習者が最初に「あなた」として習うかもしれない「당신 (タンシン)」。しかし、これは日常会話で目上の人や初対面の人に使うと、非常に失礼にあたる場合が多い、取り扱いに注意が必要な言葉です。
「당신」が主に使われるのは、以下の限定的な状況です。
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夫婦間でお互いを呼ぶとき:
特に少し改まったニュアンスで、愛情や敬意を込めて使われることがあります。日本語の「あなた(妻が夫へ)」や「おまえ(夫が妻へ、愛情を込めて)」のような感覚に近いかもしれません。例: 당신, 오늘 저녁 뭐 먹고 싶어요? (タンシン, オヌル チョニョク ムォ モッコ シポヨ? – あなた、今日の夕食何食べたい?)
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書き言葉や歌詞、詩的な表現で不特定の「あなた」を指すとき:
手紙や広告文、歌の歌詞などで、読者や聞き手一般を指して「あなた」と表現する場合に使われます。例: 당신의 꿈을 응원합니다. (タンシネ クムル ウンウォナムニダ – あなたの夢を応援します。)
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喧嘩の相手や、見知らぬ相手に対して強い不満や敵意を示すとき:
これは非常にネガティブな用法で、相手を見下したり、挑発したりするニュアンスで使われます。「お前!」「てめえ!」といった乱暴な言葉に近い感覚です。ドラマなどで見かけることがありますが、学習者が使うべき場面はまずありません。例: 당신, 지금 뭐라고 했어? (タンシン, チグム ムォラゴ ヘッソ? – お前、今何て言った?)
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一部の翻訳調の文章や、非常に丁寧さを強調したいが他に適切な表現がない場合:
稀ですが、学術論文の翻訳などで無理やり二人称代名詞を当てはめた結果「당신」が使われることもあります。
このように、「당신」は非常に使い方が難しい単語です。基本的には、日常会話で初対面の人や目上の人に「あなた」の意味で使うのは避けるべきと覚えておきましょう。では、代わりにどのような表現を使えば良いのでしょうか。
初対面やビジネスで!「이름 + 씨/님」の失礼のない呼び方
初対面の人や、ある程度距離のある相手、ビジネスシーンなどでは、相手の名前や役職名を使って呼ぶのが一般的です。
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フルネーム + 씨 (シ):
「~さん」にあたる最も一般的な敬称です。主に同等かやや目下、あるいは年齢が近いがまだあまり親しくない相手に使います。フルネームの後ろに「씨」を付けます。苗字だけに「씨」を付ける(例:김 씨 – キムさん)のは、やや見下したニュアンスになることがあるため、親しい間柄でなければ避けた方が無難です。名前だけに付ける(例:미나 씨 – ミナさん)のはOKです。例: 김민수 씨, 안녕하세요? (キム・ミンス シ, アンニョンハセヨ? – キム・ミンスさん、こんにちは?)
例: 미나 씨, 이 서류 좀 확인해 주세요. (ミナ シ, イ ソリュ チョム ファギネ ジュセヨ – ミナさん、この書類ちょっと確認してください。)
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名前/役職名 + 님 (ニム):
「~様」にあたる、より丁寧な敬称です。明らかに目上の人、顧客、先生、医者、社長など、敬意を払うべき相手に使います。名前(フルネームまたは名前だけ)や役職名の後ろに「님」を付けます。例: 이영희 선생님, 질문 있습니다. (イ・ヨンヒ ソンセンニム, チルムン イッスムニダ – イ・ヨンヒ先生、質問があります。)
例: 사장님, 잠깐 시간 있으십니까? (サジャンニム, チャムカン シガン イッスシムニカ? – 社長様、少々お時間ございますか?)
ビジネス上の注意点: 日本では社外の人に対して自社の上司を呼び捨てにしますが(例:「部長の田中が」)、韓国では社外の人に対しても自社の上司に「님」を付けて呼びます(例:「김 부장님께서… – キム部長様が…」)。これは文化の違いなので注意が必要です。
相手の名前が分からない場合は、無理に二人称を使おうとせず、以下のような間接的な表現を使うか、状況に応じて「저기요 (チョギヨ – すみません)」と呼びかけてから用件を伝えるのが良いでしょう。
間接的な二人称「그쪽 (クッチョク)」「선생님 (ソンセンニム)」の活用法
直接的な二人称代名詞を避けたい場合や、相手の名前が分からない場合に使える便利な表現があります。
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그쪽 (クッチョク):
直訳すると「そちら(の方)」という意味です。相手の名前が分からない初対面の人や、少し距離を置きたい相手に対して、婉曲的に「あなた」と指し示すときに使えます。ただし、親しい間柄で使うとよそよそしく聞こえることがあります。また、状況によってはやや冷たい印象を与えることもあるため、丁寧な言葉遣いを心がけましょう。例: 혹시 그쪽도 이 행사에 참여하러 오셨어요? (ホクシ クッチョクド イ ヘンサエ チャミョハロ オショッソヨ? – もしかして、そちら様もこのイベントに参加しにいらっしゃったのですか?)
店員がお客さんに対して使うこともあります: 그쪽은 뭘로 하시겠어요? (クッチョグン ムォルロ ハシゲッソヨ? – そちら様は何になさいますか?)
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선생님 (ソンセンニム):
元々は「先生」という意味ですが、学校の先生だけでなく、医者、弁護士、芸術家など専門職の人や、広く敬意を表すべき年配の男性に対して、名前が分からなくても「先生」と呼びかける形で二人称のように使えます。女性に対しては「사모님 (サモニム – 奥様、あるいは社会的地位のある女性への敬称)」が使われることもありますが、「선생님」も性別問わず使われることがあります。例: (病院で) 선생님, 어디가 안 좋으세요? (ソンセンニム, オディガ アン チョウセヨ? – (患者さんに対して)どこか具合が悪いのですか?)
例: (道を尋ねる際、年配の男性に) 선생님, 실례지만 시청이 어디예요? (ソンセンニム, シルレジマン シチョンイ オディエヨ? – 先生、失礼ですが市役所はどこですか?)
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이쪽 (イッチョク) / 저쪽 (チョッチョク):
「こちら(の方)」「あちら(の方)」という意味で、複数人いる中で特定の人を指す場合や、紹介する際などに使えます。「그쪽」よりは指示代名詞的な意味合いが強いです。
これらの表現は、直接的な二人称代名詞を避け、相手に敬意を払いながらコミュニケーションを取りたい場合に非常に有効です。
その他、知っておくと便利な「あなた」の表現 (귀하 (クィハ), 그대 (クデ)など)
使用頻度は低いものの、特定の文脈で使われる二人称表現もいくつかあります。
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귀하 (クィハ – 貴下):
主に公式な文書や手紙、ビジネスメールなど、非常にフォーマルな書き言葉で使われる二人称です。「貴殿」「貴社」のような硬い表現で、日本語の「貴下」に近いです。会話で使うことはありません。例: (表彰状などで) 귀하는 평소 투철한 책임감으로… (クィハヌン ピョンソ トゥチョラン チェギムガムロ… – 貴下は普段、透徹した責任感をもって…。)
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그대 (クデ):
主に詩や歌の歌詞、小説などの文学作品で使われる、ロマンチックで古風な響きを持つ二人称です。「そなた」「君」といったニュアンスで、日常会話ではほとんど使われません。恋人同士でふざけて使うことはあるかもしれません。例: (歌の歌詞で) 오, 그대여 변치 마오. (オ, クデヨ ピョンチ マオ – ああ、君よ、変わらないでおくれ。)
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자네 (チャネ):
年上の人が、かなり年下の親しい相手や弟子などに対して使う、やや古風な二人称。「君」に近いですが、少し威厳や親密さを込めたニュアンスがあります。現代の若者はあまり使いません。教授が学生に、または祖父母が孫に使うような場面で見られることがあります。例: (師匠が弟子に) 자네, 실력이 많이 늘었군. (チャネ, シルリョギ マニ ヌロッグン – 君、腕がずいぶん上がったな。)
これらの表現は使用場面が限られているため、まずは「너」「이름+씨/님」「그쪽」「선생님」などの基本的な表現をしっかりマスターすることが先決です。
【親密な二人称】恋人・夫婦間で使う特別な呼び方
恋人同士や夫婦間では、より親密さを表す特別な二人称や呼び方が使われます。これらは愛情表現の一つであり、関係性の深さを示します。

恋人や夫婦ならではの特別な呼び方で、愛情を表現します
「자기야 (チャギヤ)」- 愛情を込めた呼びかけの定番
「자기야 (チャギヤ)」は、恋人同士や若い夫婦がよく使う、愛情のこもった呼びかけです。直訳すると「自分だよ」のような意味ですが、ニュアンスとしては日本語の「ダーリン」「ハニー」「ねえ、あなた」のような甘い呼びかけに近いです。「자기 (チャギ)」だけでも使われます。
例: 자기야, 오늘 영화 보러 갈까? (チャギヤ, オヌル ヨンファ ポロ カルカ? – ねぇ、ダーリン、今日映画見に行こうか?)
例: 우리 자기, 많이 피곤해 보여. (ウリ チャギ, マニ ピゴネ ボヨ – 僕のハニー、すごく疲れて見えるよ。)
「자기」は元々「自分自身」という意味の代名詞ですが、これが転じて恋人や配偶者を指す言葉としても使われるようになりました。非常に親密な関係でのみ使われる表現です。
「여보 (ヨボ)」- 夫婦の呼びかけ、その意味と使い方
「여보 (ヨボ)」は、主に夫婦間でお互いを呼びかけるときに使う言葉です。日本語の「おい」「ねえ、あなた」「おまえ」といった呼びかけに相当し、「자기야」よりも少し落ち着いた、長年連れ添った夫婦でも使われる表現です。
例: (妻が夫に) 여보, 오늘 좀 일찍 들어오세요. (ヨボ, オヌル チョム イルチク トゥロオセヨ – あなた、今日少し早く帰ってきてくださいね。)
例: (夫が妻に) 여보, 내 안경 못 봤어? (ヨボ, ネ アンギョン モッ ポァッソ? – おい、俺のメガネ見なかったか?)
「여보」の語源には諸説ありますが、「여기 보시오 (ヨギ ポシオ – こちらを見てください)」が短くなったものという説が有力です。夫婦以外の関係で使うことはありません。
先述の「당신 (タンシン)」も夫婦間で使われますが、「여보」の方がより日常的で一般的な呼びかけと言えるでしょう。「당신」は少し改まった感じや、愛情を再確認するような場面で使われることがあります。
子どもがいる夫婦の呼び方「OO아빠/엄마 (OOアッパ/オンマ)」と名前呼び
子どもがいる夫婦の間では、日本語と同様に「お父さん」「お母さん」と呼び合うことがよくあります。
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OO아빠 (OOアッパ) / OO엄마 (OOオンマ):
「OO」の部分に一番上の子供の名前を入れて、「~ちゃんパパ」「~ちゃんママ」のように呼び合います。これは非常に一般的です。例: (妻が夫に) 민준 아빠, 민준이 학원 데려다 줄 수 있어요? (ミンジュン アッパ, ミンジュニ ハグォン テリョダ ジュル ス イッソヨ? – ミンジュンパパ、ミンジュンを塾に連れて行ってあげられる?)
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아빠 (アッパ) / 엄마 (オンマ):
単純に「お父さん」「お母さん」と呼び合うこともあります。 -
名前呼び:
もちろん、結婚後も相手の名前をそのまま呼ぶ夫婦もいます。「OO아/야 (~ア/ヤ)」と名前を呼び捨てにしたり、「OO 씨 (~シ)」とさん付けで呼び合ったりと様々です。これは夫婦のスタイルや年齢層によって異なります。
恋人同士の甘いニックネームや愛称 (애인 (エイン), 여친/남친 (ヨチン/ナムチン)など)
恋人同士では、「자기야」以外にも様々な愛称で呼び合うことがあります。
- 애인 (エイン – 愛人): 日本語の「愛人」とは異なり、韓国語では「恋人」を意味する一般的な言葉です。直接の呼びかけというよりは、第三者に自分の恋人を紹介する際に「제 애인이에요 (チェ エイニエヨ – 私の恋人です)」のように使います。
- 여친 (ヨチン) / 남친 (ナムチン): それぞれ「여자친구 (ヨジャチング – 彼女)」「남자친구 (ナムジャチング – 彼氏)」の略語です。これも呼びかけではなく、自分の彼女や彼氏を指す言葉です。
- 내 사랑 (ネ サラン – 我が愛): 「私の愛する人」といったニュアンスで、呼びかけにも使えます。
- その他、二人だけのニックネーム: 動物の名前(例:강아지 – 子犬ちゃん、곰돌이 – クマちゃん)や、相手の特徴にちなんだ愛称など、カップルによって様々な呼び方が存在します。
これらの親密な呼び方は、二人の関係性をより深めるための愛情表現の一つと言えるでしょう。
【要注意】韓国語で「お前」にあたる失礼な二人称とタブー
親しい間柄で使う「너」も、使い方を間違えれば失礼になりえますが、それ以上に相手を明確に見下したり、喧嘩腰になったりする際に使われる、非常に失礼な二人称も存在します。これらは基本的に学習者が使うべき言葉ではありませんが、ドラマなどで耳にすることもあるため、知識として知っておくことは無駄ではありません。
喧嘩や見下す時に使う「인마 (インマ)」「자식 (チャシク)」など
以下は、相手に対して強い怒りや侮蔑の感情を込めて使われる代表的な表現です。
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이놈 (イノム) / 저놈 (チョノム) / 그놈 (クノム):
「この野郎」「あの野郎」「そいつ」といった意味で、男性に対して使われる非常にぞんざいで侮蔑的な言葉です。「놈 (ノム)」自体が「奴」という見下した言葉です。女性形は「이년 (イニョン) / 저년 (チョニョン) / 그년 (クニョン)」ですが、さらに強い侮蔑を含みます。 -
인마 (インマ):
「이놈아 (イノマ – この野郎め)」が短縮された形で、非常に荒っぽい「おい、お前!」といった呼びかけです。目上の人が年下を叱りつける際や、喧嘩の際に使われます。例: 야, 인마! 너 지금 뭐 하는 거야? (ヤ, インマ! ノ チグム ムォ ハヌン ゴヤ? – おい、こら!お前今何やってんだ?)
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자식 (チャシク):
元々は「子供」や「子息」という意味ですが、相手を「未熟者」「青二才」と見下して「こいつめ」「このガキが」といったニュアンスで使われることがあります。親が自分の子供を愛情込めて「うちの子ったら」というニュアンスで「내 자식 (ネ チャシク)」と言うこともありますが、他人に対して使う場合は基本的にネガティブです。例: 이 자식이 정말! (イ チャシギ チョンマル! – このガキが、まったく!)
これらの言葉は、相手を著しく不快にさせるため、絶対に使用しないようにしましょう。ドラマや映画で出てきたとしても、それはあくまでフィクションの中での表現です。
「야 (ヤ)!」と呼びかける際の注意点
「야 (ヤ)!」は、日本語の「おい!」「ねえ!」といった呼びかけに近いですが、これも同い年の親しい友人か、年下の相手にしか使えません。
親しい間柄で注意を引くために使う場合は問題ありませんが、少しでも目上の人や初対面の人に「야!」と呼びかけると、非常に失礼で喧嘩を売っているように聞こえます。
例: (友達に) 야, 같이 가! (ヤ, カチ カ! – おい、一緒に行こう!)
例: (弟に) 야, 내 방에 들어오지 마! (ヤ, ネ パンエ トゥロオジ マ! – おい、俺の部屋に入るな!)
目上の人や丁寧な呼びかけが必要な場合は、「저기요 (チョギヨ – すみません)」「실례합니다 (シルレハムニダ – 失礼します)」などを使うのが適切です。
二人称を省略する方が自然なケースとは?
韓国語では、日本語と同様に、文脈から誰を指しているか明らかな場合は、主語(二人称を含む)を省略する方が自然なことが多いです。
特に、目の前にいる相手に話しかける場合、いちいち「あなた」や「君」を付けなくても会話は成立します。
例: (店員がお客に) 뭐 찾으세요? (ムォ チャジュセヨ? – 何かお探しですか?) ←「손님께서는 (お客様は)」などを省略
例: (友達同士) 오늘 시간 있어? (オヌル シガン イッソ? – 今日時間ある?) ←「너는 (君は)」を省略
無理に二人称を使おうとすると、かえって不自然になったり、相手にプレッシャーを与えたりすることもあります。会話の流れや相手との関係性を考慮し、省略した方がスムーズな場合は省略する勇気も持ちましょう。
韓国ドラマから学ぶ!リアルな二人称の使い分け実践例
韓国ドラマは、生きた韓国語、特に人間関係に応じた二人称の使い分けを学ぶための宝庫です。登場人物たちの関係性や状況に注目しながらセリフを聞くことで、より深く理解することができます。
場面別・関係性別に見る二人称のバリエーション
例えば、以下のような点に注目してみましょう。
- 学園ドラマ: 生徒同士は「너 (ノ)」「야 (ヤ)」を使い、先生に対しては「선생님 (ソンセンニム)」と呼ぶ。先輩・後輩間では、後輩が先輩を「형 (ヒョン – 兄さん)」「누나 (ヌナ – 姉さん)」「선배 (ソンベ – 先輩)」などと呼ぶ。
- オフィスドラマ: 部下が上司を呼ぶ際は「부장님 (プジャンニム – 部長様)」「팀장님 (ティムジャンニム – チーム長様)」など役職名に「님」を付ける。同僚同士でも、親しさの度合いや年齢によって「OO 씨 (~さん)」を使ったり、親しくなれば「너」を使ったりする。
- 恋愛ドラマ: 恋人同士が「자기야 (チャギヤ)」、名前を呼び捨て(~아/야)、あるいは特別なニックネームで呼び合う。関係が進展するにつれて呼び方が変わる様子も面白い。
- 家族ドラマ: 夫婦が「여보 (ヨボ)」「당신 (タンシン)」「OO아빠/엄마」と呼び合う。子供が親を「아빠 (アッパ – お父さん)」「엄마 (オンマ – お母さん)」と呼ぶ。兄弟姉妹間では、年下が年上を「형 (ヒョン)」「오빠 (オッパ – お兄さん)」「누나 (ヌナ)」「언니 (オンニ – お姉さん)」と呼び、年上は年下に「너」を使う。
- 時代劇: 「그대 (クデ)」「자네 (チャネ)」「소인 (ソイン – 拙者、自分の謙称)」など、現代劇とは異なる古風な二人称や一人称が使われる。
セリフで理解するニュアンスの違いと文化的背景
ドラマのセリフを聞く際には、単に言葉の意味だけでなく、その言葉が使われる文脈、登場人物の表情や声のトーン、そしてその背景にある韓国の文化(年齢序列、上下関係など)も一緒に感じ取ることが重要です。
ドラマ視聴時のチェックポイント:
- 誰が誰に対して、どんな二人称を使っているか?
- その二人称を選んだ理由は何か?(年齢、役職、親密度など)
- 呼び方が変化する瞬間はあるか?(例:初対面から親しくなって呼び方が変わるなど)
- ある二人称が使われたとき、相手はどんな反応をしているか?(喜んでいる、怒っている、戸惑っているなど)
好きなドラマを繰り返し見たり、韓国語字幕を活用したりすることで、教科書だけでは学べないリアルな二人称の使い方が身についていくでしょう。
韓国語二人称Q&A – よくある疑問をスッキリ解決!
韓国語の二人称に関して、学習者が抱きやすい疑問とその回答をまとめました。
Q1. とりあえず「당신」を使っても大丈夫?
A1. いいえ、絶対に避けるべきです。 前述の通り、「당신 (タンシン)」は夫婦間や書き言葉、あるいは喧嘩の相手に使うなど、非常に限定的な場面で使われる言葉です。日常会話で初対面の人や目上の人に「당신」と言うと、多くの場合、相手を不快にさせたり、無礼だと思われたりします。代わりに、相手の名前が分かれば「OOO 씨 (~さん)」や「OOO 님 (~様)」、役職名「OOO 팀장님 (~チーム長様)」などを使うか、名前が分からなければ「선생님 (ソンセンニム)」や「그쪽 (クッチョク)」を状況に応じて使う、あるいは二人称を省略するのが無難です。
Q2. 目上の人に間違えて「너」を使ってしまったら?
A2. もし間違えてしまったら、すぐに気づいて謝罪するのが大切です。「죄송합니다. 제가 아직 한국말이 서툴러서요. (チェソンハムニダ. チェガ アジク ハングンマリ ソトゥルロソヨ – 申し訳ありません。私がまだ韓国語が未熟でして。)」のように、正直に謝れば、多くの場合は理解してくれるでしょう。しかし、繰り返さないように注意し、正しい言葉遣いを学ぶ努力を見せることが重要です。特に韓国は礼儀を重んじる文化なので、言葉遣いのミスは相手に悪い印象を与えやすいです。
Q3. 相手の役職が分からない時の呼び方は?
A3. ビジネスシーンなどで相手の正確な役職名が分からない場合、いくつか対処法があります。
- 可能であれば、事前に名刺交換をするか、周囲の人に確認して役職名を把握するのがベストです。
- それが難しい場合は、相手の見た目や雰囲気から判断し、失礼のない範囲で一般的な敬称を使うことを考えます。例えば、ある程度の年齢の男性であれば「선생님 (ソンセンニム)」と呼ぶのは比較的安全な選択肢です。
- あるいは、名前が分かれば「OOO 씨 (~さん)」が無難ですが、相手が明らかに自分より目上や地位が高いと感じる場合は、「님 (ニム)」を付けて「OOO 님」と呼ぶ方がより丁寧です。(例:김민수 님)
- 無理に役職名で呼ぼうとせず、「그쪽 (クッチョク – そちら様)」を使うか、二人称を省略して話を進めるのも一つの方法です。
一番良いのは、会話の中で相手の役職が自然と分かるまで待つか、丁寧に尋ねることです。「실례지만, 직함이 어떻게 되세요? (シルレジマン, チカミ オットケ トゥェセヨ? – 失礼ですが、役職は何でいらっしゃいますか?)」
Q4. 「~様」にあたる「~님」の正しい使い方は?
A4. 「님 (ニム)」は日本語の「~様」に相当する非常に丁寧な敬称で、様々な場面で使われます。
- 役職名 + 님: 社長様 (사장님)、部長様 (부장님)、先生様 (선생님)、お客様 (고객님 – コゲンニム)など。
- 名前 + 님: 目上の人の名前や、尊敬する人の名前に付けて呼びます。(例:이순신 장군님 – イ・スンシン将軍様)。フルネームにも、名前だけでも付けられます。(例:유재석 님 – ユ・ジェソク様、または 재석 님 – ジェソク様)。
- 家族呼称 + 님: 自分の家族ではなく、他人の家族や、格式張った場面で家族を指す際に使われることがあります。(例:아버님 – アボニム (お父様)、어머님 – オモニム (お母様)、형님 – ヒョンニム (お兄様))。
- オンラインでのハンドルネーム + 님: インターネットの掲示板やチャットなどで、相手のハンドルネームに「님」を付けて敬意を表すことが一般的です。
「님」は非常に便利な敬称ですが、乱用するとかえって不自然になることもあります。相手との関係性や状況をよく見て使いましょう。
まとめ: 相手との距離を縮める韓国語二人称マスターへの道
韓国語の二人称は、その種類の多さと使い分けの複雑さから、多くの学習者にとって一つの壁となるかもしれません。しかし、それぞれの言葉が持つニュアンスや文化的背景を理解し、相手や状況に応じて適切に使いこなせるようになれば、あなたの韓国語はより自然で洗練されたものになり、相手との心の距離もぐっと縮まるはずです。
この記事で紹介した内容を参考に、まずは基本的な「너」の使い方、そして丁寧な場面での「OOO 씨/님」や間接的な表現からマスターしていきましょう。そして、恋人や夫婦間の親密な呼び方、さらにはドラマなどで見聞きするかもしれない失礼な表現についても知識として知っておくことで、より豊かな韓国語運用能力が身につきます。
二人称マスターのためのステップ:
- ✓ 「너」を使える相手・使えない相手を明確に区別する。
- ✓ 「네가/니가」「네/니」の変化をしっかり覚える。
- ✓ 「당신」の安易な使用を避け、適切な場面を見極める。
- ✓ 敬意を表す「씨」と「님」の使い分けをマスターする。
- ✓ 役職名や間接的な表現を積極的に活用する。
- ✓ 韓国ドラマや映画を参考に、リアルな使われ方を観察する。
言葉はコミュニケーションの道具であると同時に、文化そのものでもあります。韓国語の二人称を学ぶことは、韓国の人間関係や社会のあり方を理解する一助となるでしょう。焦らず、楽しみながら、一歩ずつマスターしていってください。