韓国の嫁姑関係:夫の実家に帰らない妻が増えている?

  1. 韓国歴史・文化

シデクよりチンジョン?韓国の帰省文化が変わる!「行かない嫁」の理由と背景を徹底解説

「お正月や秋夕(チュソク)には、夫の実家に帰省するのが当たり前」…かつての韓国では、それが既婚女性にとっての常識であり、ある種の義務でした。しかし近年、「名節(명절:ミョンジョル)には시댁(シデク:夫の実家)には行かない」「自分の実家(친정:チンジョン)にだけ帰る」「夫婦だけで過ごす」といった選択をする女性、いわゆる「行かない嫁(ミョヌリ)」が増えているというのです。

この変化は、単なる個人の選択というだけでなく、韓国社会における家族観、ジェンダー意識、そして長年の課題であった嫁姑関係の変化を映し出す、興味深い現象と言えるでしょう。なぜ彼女たちは「行かない」選択をするのか?その背景にある理由と、変わりゆく韓国の帰省文化、そして現代の嫁姑関係のリアルについて、詳しく紐解いていきます。

目次

韓国の名節(旧正月・秋夕)と伝統的な帰省文化

まず、背景となる韓国の伝統的な名節の過ごし方を見てみましょう。

韓服を着て名節の祭祀の準備をする女性たち

名節の準備は女性の仕事?かつては嫁にとって大きな負担となっていた。

「嫁はシデク(夫の実家)へ」が当たり前だった時代

韓国で最も重要な年中行事である旧正月(설날:ソルラル)と秋夕(추석:チュソク)。これらの大型連休には、多くの人々が故郷に帰り、家族や親戚と過ごすのが伝統的な慣わしです。そして、家父長制の影響が強かった時代には、「結婚した女性は夫の家の人間」という考えのもと、嫁はまず夫の実家(シデク)に帰省し、そこで名節の準備を手伝い、舅(シアボジ)・姑(シオモニ)や親戚をもてなすことが、当然の役割とされてきました。

祭祀(チェサ)の準備と後片付け:嫁の役割と負担

特にシデクでの大きな仕事となるのが、先祖供養の儀式である祭祀(제사:チェサ)の準備です。チェサには、チヂミ(ジョン)、ナムル、肉料理、魚料理、果物、お餅(トック)など、数多くの料理をお膳に並べます。これらの料理を大量に作り、儀式を行い、そして後片付けをするという一連の作業は、伝統的にその家の女性、特に嫁(ミョヌリ)の몫(モク:役割、分担)とされてきました。

早朝から深夜まで立ち働き、味付けや盛り付けに気を使い、集まった親戚への挨拶回り…こうした負担は非常に大きく、「명절 증후군(ミョンジョル チュンフグン:名節症候群)」という言葉が生まれるほど、多くの既婚女性にとって名節は心身ともに疲弊する期間でした。

帰省ラッシュと「名節ストレス」

料理の準備だけでなく、帰省ラッシュの渋滞や長距離移動、シデクでの気遣い、時には姑や小姑(シヌイ)との人間関係なども、嫁にとって大きなストレス要因となっていました。

なぜ?「夫の実家に行かない嫁」が増えている理由【2025年最新事情】

こうした伝統的な名節のあり方に対し、近年、疑問を呈し、「シデクに行かない」という選択をする女性が増えています。その背景には、様々な社会の変化と個人の意識の変化があります。

理由1:不公平感と過度な労働負担への反発

最も大きな理由の一つが、名節における準備や労働が、依然として女性、特に嫁に偏っていることへの不満と反発です。「なぜ女性だけがこんなに大変な思いをしなければならないのか」「夫や他の家族は手伝ってくれない」という不公平感が、「もうシデクには行きたくない」という気持ちにつながっています。

理由2:共働き夫婦の増加と時間的制約

女性の社会進出が進み、共働き夫婦(맞벌이 부부:マッポリ プブ)が一般的になったことも大きな要因です。普段から仕事と家事・育児に追われている中で、貴重な連休をシデクでの労働に費やすことへの抵抗感が強まっています。限られた休日を、自分の休息や家族(自分の実家を含む)と過ごす時間にあてたい、と考える人が増えているのです。

理由3:ジェンダー平等意識の高まりと価値観の変化

若い世代を中心に、ジェンダー平等に対する意識が高まり、家父長制的な価値観や伝統的な性別役割分業に疑問を持つ人が増えています。「嫁だから」という理由だけで一方的に負担を強いられるのはおかしい、夫婦は対等であるべきだ、という考え方が広がり、「シデクへの帰省は義務ではない」と考える女性が増加しています。

理由4:嫁姑関係のストレス回避

良好な関係を築いている家庭ももちろんありますが、依然として嫁姑関係がストレスの原因となっているケースも少なくありません。普段離れて暮らしていても、名節で長時間顔を合わせることで、姑からの干渉や小言、価値観の違いによる衝突などが起こりやすくなります。こうした精神的な負担を避けるために、帰省そのものを選択しない、という人もいます。

理由5:個人の休息や自由時間を重視する傾向

社会全体の価値観として、集団や家の行事よりも、個人の幸福や休息、自由な時間を重視する傾向が強まっています。せっかくの連休を、気疲れするシデクで過ごすよりも、自分の好きなようにリラックスして過ごしたい、旅行に行きたい、と考える人が増えるのは自然な流れかもしれません。

コロナ禍の影響とその後の変化

新型コロナウイルスのパンデミックも、帰省のあり方に変化をもたらしました。感染拡大防止のために帰省を自粛した経験から、「無理に帰省しなくても良い」という意識が広がり、パンデミック後もその流れが継続している側面があります。

変わる名節の過ごし方:多様化する選択肢

「シデクに行かない」選択をする人が増える中で、名節の過ごし方も多様化しています。

自宅でリラックスして過ごす現代の若い夫婦

帰省しない、旅行に行く、オンラインで挨拶…名節の過ごし方も多様化している。

チンジョン(妻の実家)中心の過ごし方

シデクには行かず、自分の実家(チンジョン)にだけ帰省する、あるいはチンジョンで過ごす時間を長くするというパターンです。娘や孫に会えるチンジョンの両親にとっては嬉しい変化かもしれません。

夫婦だけで過ごす、旅行に行く

帰省そのものをせず、夫婦だけで自宅でゆっくり過ごしたり、国内・海外旅行に出かけたりするケースも増えています。特に若い世代や子供のいない夫婦に多い選択肢です。

シデク・チンジョン両方を平等に訪問

「シデク中心」ではなく、両方の実家を平等に、例えば1日ずつ訪問したり、隔年で交互に訪問したりするなど、公平性を意識したスケジュールを組む夫婦もいます。

オンラインでの挨拶

直接訪問はしなくても、ビデオ通話などを利用して、離れた場所にいる両親や親戚にオンラインで挨拶をする、という形も定着しつつあります。

夫側の反応と世代間のギャップ

妻が「シデクに行かない」と宣言したとき、夫やその家族(親世代)はどのように反応するのでしょうか?ここにも世代間のギャップが見られます。

理解を示す夫、板挟みに悩む夫

若い世代の夫の中には、妻の負担を理解し、「行かなくてもいい」「一緒に行かない」「自分の実家だけ行く」といった妻の意向を尊重する人も増えています。しかし一方で、自分の親(特に母親)の期待と妻の意向の間で板挟みになり、苦悩する夫も少なくありません。

親世代(姑・舅)の戸惑いや反発

長年「名節には息子夫婦が帰ってくるのが当たり前」と考えてきた親世代、特に姑(シオモニ)にとっては、嫁が来ないという状況は、寂しさや裏切られたような気持ち、あるいは自分たちのやり方への否定と受け止められ、戸惑いや強い反発を示すケースもあります。「最近の若い嫁は…」という不満につながりやすい部分です。

変わりゆく「家族」の形への葛藤

こうした状況は、単なる個々の家庭の問題ではなく、韓国社会全体が、伝統的な家族の形から新しい家族の形へと移行していく過程で生じる葛藤や摩擦の表れと言えるでしょう。

背景にある問題:嫁姑関係と「呼び方」のジェンダー格差?

名節の帰省問題の根底には、やはり根深い嫁姑関係の問題や、家父長制の名残とも言える文化的な側面が存在します。

依然として根強い?嫁姑間のストレス

核家族化が進んだとはいえ、価値観の違う姑との関係は、多くの嫁にとって依然としてストレスの原因となり得ます。特に名節のような機会に顔を合わせると、育児方針、家事のやり方、生活態度などについて干渉されたり、他の嫁と比較されたりすることへの不満が噴出しやすいのです。

「シデク」と「チンジョン」:呼び方に潜む上下関係への疑問

記事で触れられているように、「夫の実家」を意味する「시댁 (シデク)」という言葉自体が、どこか嫁にとって「仕えるべき家」というニュアンスを含み、対等ではない上下関係を感じさせる、という指摘もあります。一方で「妻の実家」は「친정 (チンジョン)」と呼ばれ、より親しみやすい響きがあります。こうした言葉遣い自体にも、ジェンダー的な不平等が潜んでいるのではないか、という議論も近年起こっています。

コミュニケーションの変化:「安否電話」からカカオトークへ

かつて嫁の義務とされた「安否電話(안부전화:アンブチョナ)」の習慣が廃れつつあるように、コミュニケーションの手段は電話からカカオトークなどのメッセージアプリへと変化しています。これにより、より気軽に、しかし表面的になる可能性もある、新しい関係性の距離感が生まれています。

「郷に入っては郷に従え」?異文化理解とコミュニケーション

特に、韓国人と国際結婚をした外国人嫁にとって、これらの文化的な違いは大きな戸惑いや負担となることがあります。

文化の違いを受け入れることの重要性

まず大切なのは、日本とは異なる韓国の家族観や習慣があることを理解し、頭ごなしに否定しないことです。「郷に入っては郷に従え」という言葉もありますが、なぜそのような習慣があるのか、その背景にある文化を知ろうと努める姿勢が、相手との良好な関係を築く第一歩です。

一方的な我慢ではなく、対話と調整を

しかし、文化の違いを理解することと、自分が納得できないことまで全て受け入れて我慢することは違います。負担に感じること、納得できないことについては、夫を交え、相手を尊重しつつも、自分の気持ちや考えを正直に伝え、話し合いを通じて妥協点や解決策を見つけていく努力が必要です。

自分たちらしい関係性を築く

伝統的な型にはめようとするのではなく、お互いの文化や価値観を尊重し合いながら、自分たち夫婦、そしてそれぞれの家族にとって心地よい、新しい関係性を築いていくことが重要です。正解は一つではありません。

まとめ:韓国の帰省文化から見える社会の変化と未来

韓国で「名節に夫の実家に行かない嫁」が増えているという現象は、単なる一時的なトレンドではなく、韓国社会における家族観、ジェンダー意識、そして個人の価値観の大きな変化を示す象徴的な出来事と言えます。

かつては当然とされた嫁の役割や負担に対する疑問の声が高まり、共働き夫婦の増加や個人主義的な考え方の広がりも相まって、名節の過ごし方はますます多様化しています。この変化は、世代間の葛藤や新たな課題も生んでいますが、より対等で自由な家族関係を模索するポジティブな動きと捉えることもできるでしょう。

日本に住む私たちにとっても、お隣の国で起きているこうした変化を知ることは、自分たちの社会や家族のあり方について改めて考える良い機会となるかもしれません。大切なのは、変化を理解し、多様な生き方を尊重する視点を持つことではないでしょうか。

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ソヨン (서연) この記事を書いた人

講師歴20年超、ソウル出身のネイティブスピーカー。延世大学卒業後、明治大学で学ぶ。大阪朱友外語学院、アイザック外国語学校、龍谷大学外国語文化センター等での豊富な講師経験に加え、同時通訳経験も有する。
ネイティブならではの綺麗な標準語の発音指導。初級からビジネス、通訳レベルまで、学習者のレベルと目標に合わせた体系的かつ実践的なレッスン構築。
長年の指導経験に基づき、多くの学習者を目標達成(試験合格、流暢な会話力習得など)に導く。「使える」韓国語を確実に習得させる指導力に定評があり、教材作成、レッスンカリキュラム、講師育成など幅広い分野で活躍。

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