韓国の伝統衣装「韓服(ハンボク)」とは?チマチョゴリの種類・歴史から最新トレンドまで徹底ガイド
日本に美しい着物があるように、世界各国にはその国ならではの民族衣装があります。お隣の国、韓国の伝統衣装にはどのようなものがあるのでしょうか?ドラマで見たことがあるけれど、詳しくは知らない…という方も多いかもしれません。韓国文化をより深く理解するためには、その象徴である衣装について知ることも大切です。これから韓国語の学習を始める方、文化への理解を深めたい方は、ぜひ韓国語教室で一緒に学んでみませんか?
この記事では、韓国の伝統衣装「韓服(ハンボク)」の基本から、その歴史、構造、そしてK-POPアイドルが着こなす最新スタイルや、観光で楽しめるレンタル情報、さらには着こなしのマナーまで、あらゆる魅力を徹底的に、そして深く掘り下げて解説します。

時代を超えて愛される韓服。その美しさは今、世界中から注目されています。
目次
韓服(ハンボク)とは?チマチョゴリとの違い
韓国の伝統衣装は、総称して「한복(韓服:ハンボク)」と呼ばれます。その特徴は、豊かなボリューム感から生まれる優雅なシルエットと、鮮やかな色彩です。直線と柔らかな曲線が織りなす独特の調和は、世界的に見ても美しい衣装として高く評価されています。
日本では「チマチョゴリ」という名前で広く知られていますが、これは厳密には女性用の韓服を指す言葉です。「チマ(치마)」がスカート、「チョゴリ(저고리)」が上衣を意味するため、女性の服装の組み合わせを指しているのです。この記事では、女性用だけでなく男性用も含めた「韓服」全体の魅力をご紹介します。
美しさの秘密を解剖!韓服の基本構成と種類
韓服の優雅なシルエットは、いくつかの基本パーツの組み合わせによって作られています。男女それぞれの基本構成と、装いを豊かにする小物について見ていきましょう。
女性用「チマチョゴリ」:優雅な曲線の魅力
女性用の韓服は、上半身に着る短い上衣「저고리(チョゴリ)」と、豊かに広がる巻きスカート「치마(チマ)」で構成されます。この組み合わせが、上はタイトに、下はふんわりと広がる「上薄下厚(サンバカフ)」という韓服特有の美しいシルエットを生み出します。
チョゴリの胸元で結ぶリボンのような紐は「고름(コルム)」と呼ばれ、単なる飾りではなく、前を留める実用的な役割も果たします。このコルムを一度だけ交差させて、輪を作らずに長く垂らすのが特徴的な結び方です。
そして、チマの豊かなボリュームを出すために不可欠なのが、中に履く下着のスカート「속치마(ソクチマ)」です。何枚か重ね履きすることで、チマのシルエットがより一層優雅になります。
男性用「パジチョゴリ」と重ね着の美学
男性用の韓服は、チョゴリにズボンである「바지(パジ)」を合わせた「바지저고리(パジチョゴリ)」が基本です。パジは非常にゆったりとした作りで、足首の部分を「대님(テニム)」という紐で結んで着用します。これにより、独特の丸みを帯びたシルエットが生まれます。
さらに、男性の韓服は重ね着によって格を表します。チョゴリの上には、ベストのような「조끼(チョッキ)」や、ボタン付きの上着「마고자(マゴジャ)」を着用し、外出時には最も外側にコートのような「두루마기(トゥルマギ)」を羽織るのが正式な装いでした。
韓服を彩る小物たち:男女別の装身具を詳説
韓服の美しさは、衣装本体だけでなく、それを彩る小物によって完成します。
- 【女性用】
- 꽃신(コッシン):花靴。美しい刺繍が施された絹の靴。
- 노리개(ノリゲ):チョゴリのコルムやチマの腰に付ける装飾品。様々な飾り結び(メドゥプ)や宝石で作られ、幸運を呼ぶお守りでもあります。
- 비녀(ピニョ):既婚女性が髷を留めるためのかんざし。素材やデザインで身分を表しました。
- 족두리(チョクトゥリ) / 화관(ファグァン):婚礼などの儀式で頭に載せる冠。
- 【男性用】
- 갓(カッ):朝鮮時代の両班(貴族)が被った、馬の毛などで作られた黒い帽子。身分の象徴でした。
- 망건(マンゴン):カッの下に被り、髪が乱れるのを防ぐ鉢巻状の装身具。
- 풍잠(プンジャム):マンゴンの中央につける装飾品。主に玉などで作られました。

チョゴリ、チマ、そして美しい小物たちが韓服の優雅さを創り出します。
階級と時代を映す鏡:韓服の歴史を辿る
三国時代から朝鮮王朝へ:韓服の原型と進化
韓服の基本的な形(上衣と下衣)は、高句麗・百済・新羅が覇を競った三国時代にはすでに確立されていたと言われています。高句麗の古墳壁画には、現在の韓服の原型ともいえる衣装を着た人々の姿が描かれています。高麗時代にはモンゴルの影響を受け、コルムが長くなるなどの変化が見られました。そして朝鮮王朝時代に入ると、特に女性のチョゴリの丈が徐々に短くなり、チマは胸の下で締めるハイウエストのスタイルが定着。これが現在我々がイメージする韓服の直接的なルーツとなりました。
色と文様に込められた意味:五方色と吉祥文様
韓服の鮮やかな色彩は、単なるデザインではなく、陰陽五行思想に基づく「五方色(オバンセク)」の影響を強く受けています。これは、宇宙の万物を構成するとされる5つの色(青・赤・黄・白・黒)を指し、それぞれが方角や季節、徳目を象徴します。これらの色を組み合わせることで、邪気を払い、福を招くと信じられていました。
また、施される文様にも意味が込められています。王や王妃の衣装には、絶対的な権威を象徴する龍や鳳凰が。貴族の女性の婚礼衣装などには、富貴を願う牡丹、子孫繁栄を意味するザクロ、長寿を象徴する鶴や鹿など、様々な吉祥文様が刺繍されました。韓服は、着用者の地位を示すと同時に、幸福への願いを込めた衣装でもあったのです。
現代に生きる韓服:伝統から最新トレンドまで
韓服は博物館の中だけの衣装ではありません。現代のライフスタイルやファッションと融合し、新たな形で進化し続けています。
カジュアルに進化した「生活韓服(改良韓服)」
伝統的な韓服は動きにくさや手入れの難しさがありましたが、現代では着心地や利便性を追求した「생활한복(生活韓服)」や「개량한복(改良韓服)」が人気です。リネンやコットンなどの洗濯しやすい素材を使い、チマの丈を短くしたり、チョゴリをブラウスのようにアレンジしたりと、普段着として楽しめるデザインが豊富です。ソウルの仁寺洞やオンラインショップでは、Leesle(リスル)やDanha(ダナ)といった人気の生活韓服ブランドのアイテムを見つけることができます。
K-POPアイドルが牽引する韓服の新スタイル
近年、韓服の新たな魅力を世界に発信しているのがK-POPアイドルです。特に、BLACKPINKが「How You Like That」のMVで見せた、伝統的な文様やシルエットを大胆に再解釈した衣装は象徴的です。また、BTSが「IDOL」のステージで着用した韓服スーツや、Stray Kidsが「소리꾼(ソリクン)」で見せたストリートファッションと融合したスタイルも大きな話題となりました。彼らは、韓服を「過去の遺産」ではなく「未来を創造するクールなファッション」として世界に提示し、韓服の可能性を大きく広げています。

K-POPアイドルが着こなす斬新な韓服は、伝統と現代が融合した新しいファッションの形。
韓国旅行の最高の思い出に!韓服レンタル完全ガイド
韓国を訪れたなら、ぜひ韓服を着て街を歩いてみませんか?手軽にレンタルでき、忘れられない体験になること間違いなしです。
レンタル店の選び方と料金相場【2025年最新情報】
レンタル店は古宮周辺に集中しています。料金は韓服の種類やレンタル時間によって異なりますが、2〜4時間で15,000ウォン〜50,000ウォン程度が相場です。選ぶ際には、「伝統韓服」と「テーマ韓服(フュージョン韓服)」の違いを知っておくと良いでしょう。
- 伝統韓服:落ち着いた色味でシンプルなデザイン。より本物に近い体験をしたい方におすすめ。
- テーマ韓服:レースや金箔、ビーズなどをふんだんに使った豪華なデザイン。写真映えを重視する方に人気です。
ヘアセットや小物(バッグ、髪飾りなど)が料金に含まれているか、オンラインで事前予約すると割引があるかなどもチェックポイントです。
人気のレンタルエリアとおすすめ写真スポット
最も人気なのは景福宮周辺です。宮殿内の勤政殿(クンジョンジョン)や慶会楼(キョンフェル)を背景に撮るのが王道。少し足を延くして、伝統家屋が並ぶ北村韓屋村(プクチョンハノクマウル)の路地裏や、おしゃれなカフェと伝統が融合した仁寺洞(インサドン)のサムジギルも絶好の写真スポットです。袖で口元を隠すポーズや、チマをふわりと広げるポーズなど、韓服ならではのポージングに挑戦するのも楽しいでしょう。
韓服を着る上でのマナーと美しく見せるコツ
せっかく韓服を着るなら、より美しく、そして正しく着こなしたいもの。基本的なマナーとコツをご紹介します。
知っておきたい着付けの基本:右前とコルムの結び方
チョゴリは、日本の着物とは逆で、右側の襟が上に来る「右前(오른여밈、オルンヨミム)」で着るのが正しい着方です。これは、生者と死者の着方を区別するための重要なルールです。また、胸元のコルムは、短い方の紐を上にして一度結び、長い方の紐で輪を作って短い紐をくぐらせて締めます。レンタル店でスタッフが手伝ってくれるので安心してください。
優雅に見える所作:歩き方、座り方、お辞儀
韓服を着た際は、少し歩幅を小さくして歩くと、チマの裾の揺れが美しく見えます。座る時は、チマの後ろの部分を軽く持ち上げてから座ると、シワになりにくく、形も崩れません。お辞儀(절、チョル)をする際は、両手を前で合わせ(男性は左手が上、女性は右手が上)、ゆっくりと腰をかがめると、非常に優雅な印象になります。
人生の節目を彩る韓服:お祝い事と儀礼
韓服は、韓国人の人生の重要な節目において、その場を彩り、伝統を繋ぐ大切な役割を果たします。
最初の晴れ着:1歳の誕生日祝い「トルチャンチ」
韓国では、赤ちゃんの満1歳の誕生日を盛大に祝う「돌잔치(トルチャンチ)」という文化があります。この時、赤ちゃんは初めて韓服に袖を通し、家族や親戚一同で健やかな成長を願います。ハイライトは、将来を占う「돌잡이(トルチャビ)」。赤ちゃんの前に様々な物を置き、何を選ぶかで将来を占います。例えば、筆や本は学者、お金は富豪、糸は長寿を象徴します。

トルチャンチで着る初めての韓服は、家族の愛情が詰まった特別な一着です。
結婚式の韓服:伝統婚とペベク(幣帛)の儀式
現代の結婚式ではウェディングドレスが主流ですが、式後の「폐백(ペベク)」という儀式で、新郎新婦は豪華な伝統婚礼衣装に着替えます。これは、新婦が新郎側の親族に初めて正式な挨拶をする儀式で、ナツメや栗を投げて子宝を占うなど、伝統的な慣習が行われます。
名節(旧正月・秋夕)と韓服の関わり
旧正月である「설날(ソルラル)」や、お盆にあたる「추석(チュソク)」といった名節(ミョンジョル)には、새배(セベ)と呼ばれる新年の挨拶や、茶礼(チャレ)という先祖供養の儀式のために韓服を着る習慣が今も残っています。
Q&A:韓服に関するよくある質問
Q. トイレはどうするの?
A. レンタル韓服の場合、チマの下にワイヤーの入ったソクチマ(パニエのようなもの)を履くことが多いです。トイレの際は、チマとソクチマを一緒にまくり上げて、抱え込むようにすると比較的スムーズです。少しコツがいりますが、慣れれば大丈夫です。
Q. 夏は暑くない?冬は寒くない?
A. 夏用の韓服は、風通しの良い薄い素材(モシなど)で作られています。冬用は、中に重ね着をしたり、防寒用のベスト「배자(ペジャ)」や毛皮の付いた帽子などを合わせたりして寒さ対策をします。レンタル店では季節に合った韓服を用意してくれます。
Q. 着物との一番の違いは?
A. 構造的に大きな違いは、着物が一枚の布を体に巻きつけて帯で固定するのに対し、韓服は上衣(チョゴリ)と下衣(チマやパジ)に分かれているセパレートタイプである点です。これにより、着物よりも動きやすいと感じる人が多いです。
まとめ
韓国の伝統衣装「韓服」について、その基本構造から歴史、そして現代での楽しみ方までを詳しくご紹介しました。韓服は、単なる美しい衣装であるだけでなく、韓国の歴史、文化、そして人々の精神性を映し出す象徴です。
伝統的な様式美を守りながらも、現代のファッションとして、また特別な思い出を作るための体験として、新しい魅力で輝き続けています。韓国を訪れる機会があれば、ぜひ一度、韓服の袖に手を通し、その奥深い魅力を肌で感じてみてください。