懐かしい?新しい?韓国の伝統遊び|日本との比較、ルール、文化背景を詳しく紹介
スマートフォンやゲーム機がなかった時代、子供たちはどんな遊びに夢中になっていたのでしょうか?日本にもコマ回しやめんこ、お手玉など、昔ながらの遊びがたくさんありますが、お隣の韓国にも、世代を超えて楽しまれてきた豊かな「伝統遊び(전통놀이:チョントンノリ)」の文化があります。
中には、日本の遊びと驚くほどよく似ているものもあれば、韓国ならではのユニークな遊びも。現代では、テレビゲームやインターネットの普及で外遊びの機会が減っていると言われますが、これらの伝統遊びは、今でもお祭りやイベント、家庭などで楽しまれ、文化として大切に受け継がれています。
今回は、日本と似ている遊びから韓国固有の遊びまで、代表的な韓国の伝統遊びをピックアップし、そのルールや歴史的背景、文化的意味などを詳しくご紹介します。大人にとっては懐かしく、子供にとっては新しい発見があるかもしれません。ぜひ韓国の遊びの世界を覗いてみてください!
目次
日本とそっくり?似ている韓国の伝統遊び
まずは、日本の遊びにも通じる、どこか懐かしさを感じる韓国の伝統遊びから見ていきましょう。
大空に舞い上がれ!「凧揚げ(연날리기:ヨンナルリギ)」
日本の正月の風物詩でもある凧揚げ。韓国でも、主に旧正月(설날:ソルラル)の時期に楽しまれる伝統的な遊びです。厄を凧に乗せて空に飛ばし、一年の幸福を願うという意味合いも込められています。
- 凧の種類: 代表的なのは、中央に穴が開いた四角い形の「防牌凧(방패연:パンペヨン)」です。竹ひごで骨組みを作り、韓紙(ハンジ)を貼って作られます。様々な色や模様で飾られた美しい凧もあります。
- ヨンサウム(연싸움:凧合戦): 単に高く揚げるだけでなく、相手の凧糸を切る「凧合戦」も盛んに行われました。凧糸にガラスの粉などを塗りつけて強度を高め、巧みに操って相手の糸を切断する、スリリングな競技です。
- 日本との違い: 日本の凧(武者絵や浮世絵が描かれたものなど)に比べ、韓国の凧はシンプルなデザインが多いかもしれません。凧合戦の文化も特徴的です。
指先の技を競う「コンギノリ(공기놀이)」
これは、日本の「おはじき」や「お手玉」によく似た遊びです。元々は小さな石(공깃돌:コンギットル)を使っていましたが、現在は安全でカラフルなプラスチック製のものが主流です。主に女の子たちの間で人気があります。
- 基本的なルール: 5つのコンギ(石またはプラスチックの駒)を使います。
- まず5つ全てを手のひらに乗せ、軽く上に投げ、手の甲で受け止めます。(レベル1:1個キャッチから始まり、レベル5:5個キャッチを目指すなど地域やルールによる)
- 手の甲に乗ったコンギを再び上に投げ、落ちてくる間に床にある残りのコンギを1つ拾い、落ちてきたコンギを全て片手でキャッチします。
- これを繰り返し、床のコンギがなくなるまで続けます。(レベル1)
- 次は、床のコンギを2個ずつ拾う(レベル2)、3個と1個に分けて拾う(レベル3)…といったように難易度が上がっていきます。途中で失敗したら次の人に交代します。
- ポイント: 指先の器用さ、集中力、そして動体視力が求められます。手軽にどこでも楽しめるのが魅力です。
地面を叩いてひっくり返せ!「タッチチギ(딱지치기:めんこ)」
日本の「めんこ」とほぼ同じ遊びです。厚紙や牛乳パックなどで作った正方形または円形の「タッチ(딱지)」を使い、相手のタッチを地面に叩きつけてひっくり返したら勝ち、というシンプルなルール。
- 作り方: 新聞紙や厚紙、牛乳パックなどを折りたたんで作ります。折り方は様々ですが、丈夫でよくひっくり返るように工夫します。
- 遊び方: 順番に自分のタッチを相手のタッチ目がけて叩きつけ、ひっくり返すことを目指します。地域によっては、取ったタッチの数で勝敗を決めることも。
- ドラマで再注目?: 世界的に大ヒットした韓国ドラマ『イカゲーム』の第1話で、主人公たちがこのタッチチギで勝負するシーンが登場し、再び注目を集めました。
【会話例:めんこできる?】
가: 철수 야, 너 딱지치기를 할 줄 아니?
チョルス!メンコ(タッチチギ)のやり方知ってる?나: 나는 할 줄 몰라.
知らないよ。가: 그럼 내가 가르쳐 줄게!
じゃあ、俺がおしえてあげるよ!
回して戦え!「ペンイイチギ(팽이치기:こま回し)」
コマ(팽이:ペンイ)を回して遊ぶのは日本と同じですが、韓国の伝統的な回し方は少しユニークです。
- 韓国式の特徴: 木や金属で作られたコマに、紐(ひも)を巻き付けた専用の棒(コマチェ:팽이채)を使って叩き、回転力を与えて回します。日本の手回しや紐を引く方式とは異なります。
- 遊び方の種類:
- 오래 돌리기 (オレ トルリギ): 誰が一番長くコマを回し続けられるかを競います。
- 부딪혀 싸우기 (プディチョ サウギ): 回っているコマ同士をぶつけ合い、相手のコマを弾き飛ばしたり、回転を止めさせたりして勝敗を決めます。
- 現代のコマ: 昔ながらの木製コマもありますが、現代では日本のベイブレードのような、より高性能な競技用コマも子供たちの間で人気です。
空高く舞い上がれ!「クネティギ(그네뛰기:ブランコ)」
公園にあるような座って漕ぐブランコとは少し異なり、韓国の伝統的な「クネティギ」は、大きな木などに長い綱を渡し、その上に立って全身を使って高く漕ぎ上がる、ダイナミックな遊びです。
- 主に女性の遊び: 特に昔は、屋外での活動が制限されがちだった女性たちが、端午の節句(단오:タノ、旧暦5月5日)などの機会に、色鮮やかなチマチョゴリを着てクネティギを楽しむのが代表的な風習でした。空高く舞い上がる姿は、抑圧からの解放を象徴するかのようです。
- 技術と度胸: 単に漕ぐだけでなく、立ち上がったり、体を反らせたりと、バランス感覚と度胸が試される遊びでもあります。
- 体験場所: 韓国民俗村や一部の韓屋マウルなどで、伝統的なクネティギを体験できる場合があります。

旧正月には家族みんなでユンノリ!老若男女が楽しめる定番の遊び。
韓国ならではの伝統遊びにも挑戦!
次に、韓国固有の、あるいは特に韓国で盛んな伝統遊びをいくつかご紹介します。
正月の定番!家族で楽しむ「ユンノリ(윷놀이)」
旧正月(ソルラル)になると、家族や親戚が集まって必ずと言っていいほど行われるのが、この「ユンノリ」です。日本のすごろくに似たボードゲームです。
- 道具: 4本の「ユッ(윷)」と呼ばれる木の棒(片面が平ら、もう片面が丸い)と、円や四角が描かれた盤(ユッパン:윷판)、そして駒(マル:말)を使います。
- ルール: 2チームに分かれて対戦します。順番に4本のユッを投げ、表裏の組み合わせによって進むマス数が決まります(例:裏1表3→ド(도)=1マス、裏2表2→ケ(개)=2マス、裏3表1→コル(걸)=3マス、裏4→ユッ(윷)=4マス+もう一回、表4→モ(모)=5マス+もう一回)。自分のチームの駒全てを、盤を一周させてゴール(出発点に戻る)させれば勝ちです。相手の駒に追いつくと捕まえたり(スタートに戻す)、自分の駒を重ねて一緒に進めたり(업기:オプキ)といった戦略的な要素もあります。
- 魅力: ルールはシンプルですが、ユッの出目次第で大逆転もあり、非常に盛り上がります。老若男女問わず楽しめる、コミュニケーションツールとしての役割も大きい遊びです。
シーソーのように跳ね上がれ!「ノルティギ(널뛰기:板跳び)」
これも主に女性の遊びで、特に端午の節句(タノ)や秋夕(チュソク)などに行われます。長い板の中央に俵などを置き、その両端に人が立って交互にジャンプし、その反動で高く跳び上がる遊びです。
- 由来: 塀の外の世界を見ることができなかった昔の女性たちが、高く跳び上がることで外の様子を垣間見ようとしたのが始まり、とも言われています。
- 技術: 単に跳ぶだけでなく、空中で回転したり、様々なポーズをとったりするアクロバティックな技も見られます。バランス感覚とタイミングが重要です。
- 体験: 民俗村などで体験できることがあります。
力と技のぶつかり合い「シルム(씨름:韓国相撲)」
日本の相撲に似た、韓国固有の格闘技であり、伝統的な民俗競技です。「샅바(サッパ)」と呼ばれる布製の帯を互いの腰と太ももに巻きつけ、それを掴んで相手を投げ倒すか、膝から上を地面につければ勝ちとなります。
- 特徴: 土俵はなく、砂場などで行われます。力だけでなく、多彩な技(足技、腰技など)の駆け引きが見どころです。
- 名節のイベント: 端午の節句や秋夕などの名節には、各地でシルム大会が開催され、優勝者には「天下壮士(チョナジャンサ)」などの称号と賞品(かつては牛一頭など)が贈られました。現在でもプロのシルム大会が行われています。

チェギチャギやタッチチギは、子供たちが戸外で楽しむ身近な伝統遊び。
華麗に蹴り上げろ!「チェギチャギ(제기차기:羽根蹴り)」
穴の開いた銭などに韓紙や布を巻き付けて作った「チェギ(제기)」と呼ばれる羽根のようなものを、地面に落とさないように足(主に内側のくるぶし付近)で蹴り続ける遊びです。日本の蹴鞠(けまり)や東南アジアのセパタクローにも似ています。
- 遊び方: 一人で何回連続で蹴れるかを競ったり、複数人でパスし合ったり、様々なルールで楽しまれます。片足だけで蹴る、両足を交互に使う、高く蹴り上げるなど、様々な技があります。
- 子供たちの遊び: 主に男の子たちの間で人気があり、特別な道具がなくても手軽に楽しめるため、昔は路地裏などでよく見られた光景でした。
宮廷の遊びを体験?「投壺(투호:トゥホ)」
少し離れた場所に置かれた壺(壷)に向かって矢を投げ入れ、入った本数を競う、比較的穏やかで雅な遊びです。元々は中国から伝わり、朝鮮王朝時代には宮廷や両班(ヤンバン:貴族階級)の間で嗜まれました。
- ルール: 簡単そうに見えて、矢を壺に入れるのは意外と難しいです。集中力とコントロールが求められます。
- 体験場所: 古宮(景福宮など)や民俗村、韓屋マウルなどで、体験コーナーが設けられていることがあります。
伝統遊びはどこで楽しめる?現代での伝承
これらの伝統遊びは、現代でも様々な場所で体験したり、目にしたりすることができます。
博物館や民俗村、韓屋マウル
ソウルの国立民俗博物館や、京畿道の韓国民俗村、南山コル韓屋マウル、全州韓屋村などでは、伝統家屋の庭などで、ユンノリ、トゥホ、ノルティギ、クネティギなどの伝統遊びを体験できるコーナーが常設またはイベント時に設けられていることが多いです。外国人観光客でも気軽に楽しめます。
地域のお祭りやイベント
旧正月、端午、秋夕といった名節の時期には、各地で伝統遊びに関連したイベントやお祭りが開催されます。シルム大会や凧揚げ大会、ユンノリ大会など、地域住民が参加して盛り上がります。
学校での伝承活動
小学校などでは、伝統文化を学ぶ授業の一環として、伝統遊びが取り入れられることもあります。子供たちが遊びを通じて自国の文化に触れる機会となっています。
なぜ今、伝統遊びが大切なのか?
デジタルゲームやインターネットが普及した現代において、なぜ伝統遊びが大切なのでしょうか?
デジタル時代における外遊びの価値
画面を見る時間が増え、外で体を動かす機会が減っている現代の子供たちにとって、凧揚げ、チェギチャギ、タッチチギなどの伝統遊びは、楽しみながら体力やバランス感覚、協調性を育むことができる貴重な機会となります。
世代間のコミュニケーション
ユンノリのように、おじいちゃん、おばあちゃんから孫まで、世代を超えて一緒に楽しめる遊びは、家族間のコミュニケーションを深める良いきっかけとなります。遊び方やコツを教えたり、昔の思い出を語り合ったりする中で、世代間の交流が生まれます。
文化の継承
伝統遊びは、その国の歴史や文化、価値観を反映しています。遊びを通じて、子供たちは自然と自国の文化に親しみ、それを次の世代へと受け継いでいくことにつながります。
まとめ:韓国の伝統遊びで、大人も子供も楽しもう!
日本と似ているものから、韓国ならではのユニークなものまで、様々な魅力を持つ韓国の伝統遊び。ルールはシンプルでも奥が深く、世代を超えて楽しめるものがたくさんあります。
ゲームやスマホから少し離れて、家族や友人と一緒に伝統遊びに興じてみるのはいかがでしょうか?韓国旅行の際には、民俗村やイベントなどで、ぜひ体験してみてください。きっと、韓国文化の新たな一面を発見し、旅の良い思い出になるはずです。