韓国語と北朝鮮の言葉、どこが違う?ドラマがもっと面白くなる7つの違いを徹底解説!
韓流ドラマや映画を見ていると、時折登場する北朝鮮のキャラクター。彼らが話す言葉が、普段聞き慣れた韓国語と少し違うことに気づいたことはありませんか? 「もしかして方言?」「それとも全く別の言語なの?」そんな疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。同じハングルを使っていても、韓国と北朝鮮では言葉に様々な違いが存在します。今回は、そんな韓国語と北朝鮮の言葉の違いについて、具体的な例を交えながら詳しく掘り下げていきます。この記事を読めば、ドラマのセリフがより深く理解できたり、ニュースで聞く言葉の背景が分かったりするかもしれません。
目次
韓国語と北朝鮮の言葉:基本情報と言語背景
韓国と北朝鮮では、それぞれ言語に対する呼称や規範が異なります。まずは、その基本的な情報と、なぜ言葉に違いが生まれたのか、その歴史的背景から見ていきましょう。
標準語(韓国)と文化語(北朝鮮):呼び方の違い
韓国では、ソウルを中心とした言葉を基盤とする「표준어(ピョジュノ、標準語)」が国の公式な言語として定められています。これは、教育やメディアで広く使用され、韓国語学習者が一般的に学ぶ言葉です。
一方、北朝鮮では平壌の言葉を基盤とした「문화어(ムンファオ、文化語)」が公用語とされています。「文化語」という名称には、革命的で洗練された言葉であるという政治的なニュアンスが含まれており、国民の思想教育とも深く結びついています。このように、呼称一つとっても、両国の言語に対する姿勢の違いが垣間見えます。
なぜ言葉に違いが生まれたのか?歴史的背景を探る
元々、朝鮮半島では地域ごとに多様な方言が存在していました。しかし、1945年の解放後、南北に分断され、1950年から1953年にかけての朝鮮戦争によってその分断は決定的となりました。その後、約70年以上にわたり、両国は異なる政治体制の下で独自の道を歩んできました。
この長い断絶期間中に、それぞれの政府は独自の言語政策を推進しました。韓国では、標準語の普及と同時に、国際化の流れの中で外来語を比較的柔軟に受け入れてきました。一方、北朝鮮では、主体(チュチェ)思想に基づき、外国の影響を排し、民族語の純粋性を保つことを目的とした「言語純化運動」が強力に推し進められました。これにより、外来語は徹底的に固有語に置き換えられ、政治体制を反映した独特の語彙が発達するなど、言語の面でも独自の進化を遂げることになったのです。
こうした歴史的・社会的背景が、現在の韓国語と北朝鮮の言葉の間に見られる様々な違いを生み出す大きな要因となっています。
発音・表記における具体的な違い
韓国語と北朝鮮の言葉の間には、発音や表記に関していくつかの顕著な違いが見られます。特に「頭音法則」の適用の有無は、両言語を区別する上で非常に重要なポイントです。
【重要ポイント1】頭音法則の有無が最大の違い
韓国語における頭音法則(두음법칙、トゥウムポプちク)とは、特定の音が単語の初め(語頭)に来る場合に、発音しやすくするために別の音に変化するという規則です。この法則は主に漢字語に適用されます。しかし、北朝鮮の文化語では、この頭音法則を原則として適用しません。これは、漢字の本来の音を尊重するという立場や、言語の「純粋性」を保つという言語政策が影響していると考えられています。
具体的にどのような違いがあるのか、いくつかの例を見ていきましょう。
事例1:「녀(ニョ)」「뇨(ニョ)」「뉴(ニュ)」「니(ニ)」が「여(ヨ)」「요(ヨ)」「유(ユ)」「이(イ)」に
韓国語では、漢字語の語頭に来る「ㄴ(ナ行)」や「ㄹ(ラ行)」の音が脱落したり、別の音に変わったりします。
- 「女子(ニョジャ)」:韓国語 여자 (ヨジャ) vs 北朝鮮 녀자 (ニョジャ)
- 「匿名(ニンミョン)」:韓国語 익명 (インミョン) vs 北朝鮮 닉명 (ニンミョン) (※この場合、北朝鮮でも「익명」と言うこともありますが、原則として頭音法則を適用しない例として)
例えば、日本でもお馴染みの「キム・ヨナ選手」の「ヨナ(연아)」も、もし頭音法則がなければ「ニョナ(련아)」となっていたかもしれません(「연아」は固有語ですが、漢字語の「李(리)さん」が「イ(이)さん」になるのと同じ原理です)。
事例2:「랴(リャ)」「려(リョ)」「례(リェ)」「료(リョ)」「류(リュ)」「리(リ)」が「야(ヤ)」「여(ヨ)」「예(イェ)」「요(ヨ)」「유(ユ)」「이(イ)」に
- 「料理(リョリ)」:韓国語 요리 (ヨリ) vs 北朝鮮 료리 (リョリ)
- 「歴史(リョクサ)」:韓国語 역사 (ヨクサ) vs 北朝鮮 력사 (リョкса)
- 「理由(リユ)」:韓国語 이유 (イユ) vs 北朝鮮 리유 (リユ)
事例3:「라(ラ)」「래(レ)」「로(ロ)」「뢰(レ)」「루(ル)」「르(ル)」が「나(ナ)」「내(ネ)」「노(ノ)」「뇌(ヌェ)」「누(ヌ)」「느(ヌ)」に
- 「労働(ロドン)」:韓国語 노동 (ノドン) vs 北朝鮮 로동 (ロドン)
- 「来日(レイル)」:韓国語 내일 (ネイル – 明日の意味も) vs 北朝鮮 래일 (レイル)
- 「楽園(ラグォン)」:韓国語 낙원 (ナグォン) vs 北朝鮮 락원 (ラグォン)
このように、頭音法則の適用の有無によって、同じ漢字語でも発音が大きく異なる場合があります。これは、韓国語に慣れた人が北朝鮮の言葉を聞いたときや、その逆の場合に、最も戸惑う点の一つと言えるでしょう。

頭音法則の違いは、単語の印象を大きく変えます。韓国では「여자(女性)」、北朝鮮では「녀자」となります。
【重要ポイント2】イントネーションとアクセントの違い
文字表記には直接現れませんが、会話の印象を大きく左右するのがイントネーション(抑揚)とアクセントです。
韓国の標準語(ソウル方言ベース)は、比較的抑揚が少なく、リズミカルながらも全体的に平坦な印象を与えることがあります。疑問文では語尾が自然に上がりますが、全体的なトーンは落ち着いていることが多いです。
一方、北朝鮮の文化語(平壌方言ベース)は、標準語に比べて抑揚が強く、独特の力強いリズム感を持つのが特徴です。特に演説などでは、言葉の一つ一つを強調するような話し方が目立ちます。そのため、韓国人が文化語を聞くと、やや硬く、強い印象を受けることがあると言われています。ドラマなどで北朝鮮の人物を演じる俳優は、このイントネーションの違いを巧みに表現しています。
例えば、同じ「ありがとう」を意味する「고맙습니다 (コマプスムニダ)」や「감사합니다 (カムサハムニダ)」も、北朝鮮のアクセントでは、よりハッキリとした、時にはやや途切れるような区切りで発音される傾向があります。こうした微妙な音の運び方の違いが、言葉全体の雰囲気を異なったものにしています。
語彙・表現における具体的な違い
発音や表記だけでなく、使われる単語(語彙)や表現にも、韓国と北朝鮮の間には多くの違いが見られます。特に漢字語の扱い方や外来語の受容度において、その差は顕著です。
【重要ポイント3】漢字語か固有語か:単語選択の傾向
韓国では日常生活や学術用語などで漢字語(漢字に由来する言葉)が広く使われています。日本語にも多くの漢字語があるため、意味を類推しやすい単語も少なくありません。
これに対し、北朝鮮では言語純化運動の一環として、可能な限り漢字語を避け、固有語(朝鮮半島固有の言葉、純ウリマルとも呼ばれる)を使用する傾向が強いです。また、漢字教育も韓国に比べて縮小されているため、若い世代ほど漢字の知識が限定的であると言われています。その結果、同じ概念を表すのに、韓国では漢字語、北朝鮮では固有語が使われるケースが多く見られます。
具体例で比較:日常生活で使う言葉の違い
以下にいくつかの例を挙げます。
日本語 | 韓国語 (標準語) | 北朝鮮の言葉 (文化語) | 備考 |
---|---|---|---|
うつ病 | 우울증 (ウウルチュン) | 슬픔증 (スルプムチュン) | 「憂鬱症」 vs 「悲しみ症」 |
卵 | 계란 (ケラン) / 달걀 (タルギャル) | 닭알 (タガル) | 「鶏卵」(漢字語) / 固有語 vs 「鶏の卵」(固有語) |
友人、友達 | 친구 (チング) | 동무 (トンム) | 「親旧」(漢字語) vs 「同務」(元々は同志の意味合いも) |
歯磨き粉 | 치약 (チヤク) | 이닦이약 (イタッキヤク) | 「歯薬」(漢字語) vs 「歯磨き薬」(固有語の組み合わせ) |
乾杯 | 건배 (コンベ) | 축배 (チュクペ) | 「乾杯」(漢字語) vs 「祝杯」(漢字語だが選択が異なる) |
特に北朝鮮で「동무(トンム)」は、元々「友」を意味する言葉でしたが、社会主義体制下で「同志」という意味合いが強くなりました。しかし、最近では若い世代の間で再び「友達」のような軽いニュアンスで使われることもあるなど、言葉の意味合いも時代と共に変化しているようです。
【重要ポイント4】外来語の受容度と翻訳の違い
グローバル化が進む現代社会において、韓国では英語を中心とした外来語が積極的に取り入れられ、日常会話にも頻繁に登場します。日本語でもカタカナ語が多用されるのと似ていますね。 K-POPの歌詞などにも多くの英語が使われています。
一方、北朝鮮では、ここでも言語純化運動の影響が色濃く反映され、外来語の使用は極力統制されています。外来の概念や事物に対しては、可能な限り固有語で言い換えたり、新たな朝鮮語の造語を当てたりします。このため、韓国では当たり前に使われている外来語が、北朝鮮では全く通じないか、あるいは全く異なる言葉で表現されることがよくあります。
具体例で比較:「ジュース」や「アイスクリーム」は何と言う?
日本語 (元になった外来語) | 韓国語 (標準語) | 北朝鮮の言葉 (文化語) | 文化語の直訳的意味 |
---|---|---|---|
ワンピース (服) | 원피스 (ウォンピス) | 달린옷 (タリンオッ) | ぶら下がった服、つながった服 |
ジュース | 주스 (チュス) / 쥬스 (ジュス) | 과일단물 (クァイルタンムル) | 果物の甘い水 |
アイスクリーム | 아이스크림 (アイスクリム) | 얼음보숭이 (オルムボスニ) / 에스키모 (エスキモ – ロシア語由来) | 氷の綿菓子・ふわふわ / エスキモー |
シャンプー | 샴푸 (シャムプ) | 머리물비누 (モリムルピヌ) | 頭用の水石鹸 |
ヘリコプター | 헬리콥터 (ヘリコプト) | 직승기 (チクスンギ) | 直昇機 (漢字語由来の造語) |
サッカーの「ゴールキーパー」 | 골키퍼 (コルキポ) | 문지기 (ムンジギ) | 門番 |
このように、韓国では外来語をそのままカタカナ(ハングル)表記で使うことが多いのに対し、北朝鮮ではその意味を汲み取って固有語で表現しようとする姿勢が明確です。これは、言語に対する考え方の根本的な違いを反映していると言えるでしょう。

外来語の扱いは南北で大きく異なります。例えば「ジュース」は韓国で「주스」、北朝鮮では「과일단물(果物の甘い水)」と言います。
【重要ポイント5】社会体制を反映した特有の語彙
北朝鮮の言葉には、その独自の社会主義体制やイデオロギーを色濃く反映した特有の語彙が多く存在します。これらは韓国ではほとんど使われないか、あるいは全く異なる意味で理解される言葉です。
- 동무 (トンム): 前述の通り、元々は「友」を意味しましたが、北朝鮮では主に「同志」という意味で使われます。ただし、最近では若い世代を中心に本来の「友達」の意味で使われることもあるようです。
- 수령님 (スリョンニム): 「首領様」を意味し、主に金日成主席や金正日総書記に対する最大限の敬称として使われます。
- 로동신문 (ロドンシンムン): 朝鮮労働党の機関紙である「労働新聞」のことです。
- 인민반 (インミンバン): 地域住民を組織する末端の行政単位「人民班」。住民の相互監視や思想教育の場ともなっています。
- 생활총화 (センファルチョンファ): 「生活総和」。定期的に行われる自己批判や相互批判の集会を指します。
これらの言葉は、北朝鮮社会の仕組みや価値観を理解する上で重要な手がかりとなります。韓流ドラマや映画で北朝鮮の場面が出てくる際に、こうした言葉に注目してみると、より深く背景を理解できるかもしれません。
【重要ポイント6】日常会話での微妙なニュアンスの違い
単語や文法だけでなく、日常会話における言葉の選び方やニュアンスにも、韓国と北朝鮮の間で違いが見られることがあります。
例えば、敬語の使い方です。両国ともに敬語体系は存在しますが、北朝鮮では社会主義的な平等思想から、過度な敬語表現を避ける傾向があるとも言われています。一方で、指導者に対する敬語は絶対的なものです。また、「동무(トンム)」のような呼びかけは、使う相手や状況によって親しみを込めた呼びかけにも、公式な場での呼びかけにもなり得ます。
また、韓国では婉曲的な表現や間接的な言い回しが好まれる場面がありますが、北朝鮮ではより直接的でストレートな表現が使われることもあるようです。ただし、これは一般論であり、個人の性格や状況によって大きく異なります。
感情表現の仕方についても、文化的な背景の違いが言葉遣いに影響を与える可能性があります。例えば、喜びや悲しみを表現する際の言葉の選び方や抑揚に、微妙な差が感じられるかもしれません。
例文で見てみましょう。以下の会話は、元記事からの引用です。
미나:퀴즈 하나 낼게요. 북한말 ‘원주필’이 뜻하는 물건은 무엇일까요?
ミナ:クイズを一つ出しますね。北朝鮮の言葉「원주필(ウォンジュピル)」が意味する物は何でしょうか?
유리:아, 그거 쉽죠. 볼펜!
ユリ:あ、それ簡単でしょ。ボールペン!
미나:정답이에요!!
ミナ:正解です!!
この会話で出てきた北朝鮮の言葉「원주필 (ウォンジュピル)」は、韓国語の「볼펜 (ボルペン)」、つまり「ボールペン」のことです。「円珠筆」という漢字語に由来する言葉で、北朝鮮の言葉の特徴がよく現れていますね。
例文中の「~(으)ㄹ게요 (ウルケヨ)」(~しますね)という表現は、話し手の意志を表すもので、韓国語で非常によく使われます。これは南北共通で使われる表現の一つです。
また、韓国では「北朝鮮」のことを一般的に「북한 (プカン、北韓)」と呼び、これに対して自国(韓国)を「남한 (ナマン、南韓)」と呼ぶことがあります。一方、北朝鮮では自国を「조선민주주의인민공화국(朝鮮民主主義人民共和国)」の略称である「조선(チョソン、朝鮮)」や「공화국(コンファグク、共和国)」と呼び、韓国を「남조선(ナムチョソン、南朝鮮)」と呼びます。
「정답 (チョンダプ)」は漢字で「正答」と書き、「正解」という意味で使われます。これも南北共通の言葉です。
北朝鮮の言葉に触れる機会と学習のポイント
日本にいると、北朝鮮の生の言葉に触れる機会は限られています。しかし、韓流ドラマや映画の中には、北朝鮮のキャラクターが登場したり、北朝鮮を舞台にした作品も少なくありません。

人気ドラマ「愛の不時着」など、韓流コンテンツを通じて北朝鮮の言葉に触れる機会も増えています。
韓流ドラマや映画で見られる北朝鮮の言葉
近年大ヒットした「愛の不時着」をはじめ、「工作 黒金星(ブラック・ヴィーナス)と呼ばれた男」、「鋼鉄の雨」シリーズなど、北朝鮮の人物や社会を描いた韓国のドラマや映画は数多くあります。これらの作品では、俳優たちが北朝鮮のイントネーションや特有の語彙を巧みに使って役を演じています。
あの名シーンも言葉の違いで深まる!具体例紹介
例えば「愛の不時着」では、ヒロインのユン・セリが北朝鮮の言葉に戸惑うシーンや、北朝鮮の兵士たちが使う独特の言い回しがコミカルに描かれる一方で、シリアスな場面では言葉の違いが緊張感を生むこともあります。リ・ジョンヒョクが使う「~갔다 왔습니다(カッタワッスムニダ – 行ってきました)」という帰宅時の挨拶や、部下たちが使う「~하라우(ハラウ – ~しろ)」のような命令形は、韓国の標準語とは異なる響きを持っています。
また、北朝鮮の兵士たちが使う「일없습니다 (イルオプスムニダ)」という言葉は、直訳すると「仕事ありません」や「問題ありません」となりますが、文脈によっては「大丈夫です」「気にしないでください」といったニュアンスで使われます。これは韓国語の「괜찮아요 (ケンチャナヨ)」に近いですが、独特の響きがあります。
これらの作品を観る際に、登場人物の言葉遣いに少し注意を払うだけで、物語のリアリティが増し、文化的な背景への理解も深まるでしょう。ただし、ドラマや映画で描かれる北朝鮮の姿や言葉は、あくまでフィクションとしての演出が含まれている点には留意が必要です。
北朝鮮の言葉を学ぶには?教材や方法は?
北朝鮮の文化語を本格的に学ぼうとすると、教材や学習機会が非常に限られているのが現状です。日本国内で文化語を専門に教える機関は少なく、市販のテキストもほとんどありません。
それでも、関心のある方が情報を得る方法としては、以下のようなものが考えられます。
- 朝鮮中央テレビなどの公式メディア: 北朝鮮の国営放送は、インターネットを通じて一部視聴可能です。アナウンサーの話し方やニュースの語彙は、文化語の特徴を捉える上で参考になりますが、内容はプロパガンダの色合いが濃い点に十分注意が必要です。
- 脱北者の証言やインタビュー: YouTubeなどの動画サイトでは、脱北者の方々が自身の体験や北朝鮮の生活について語るチャンネルがあります。彼らの言葉は、より自然な北朝鮮の日常会話に近い可能性がありますが、出身地域や世代によって言葉遣いに違いがあることも考慮に入れると良いでしょう。
- 学術的な研究資料: 言語学や朝鮮学の研究者による論文や書籍には、文化語に関する詳細な分析が含まれていることがあります。専門的な内容になりますが、深く知りたい場合には役立つでしょう。
- 南北言語比較のウェブサイトや資料: 韓国の国立国語院などが、南北の言語の違いに関する資料を公開している場合があります。
学習の際は、まず韓国の標準語の基礎をしっかりと身につけた上で、違いを比較しながら学ぶのが効率的かもしれません。
【重要ポイント7】意思疎通は可能?韓国人と北朝鮮人の会話
では、実際に韓国人と北朝鮮人が会話をした場合、どの程度意思疎通が可能なのでしょうか?
基本的な会話なら通じる?その程度は?
一般的に、基本的な日常会話であれば、ある程度の意思疎通は可能だと言われています。語彙の約70~80%は共通しているという説もあります。特に、高齢の世代同士であれば、分断以前の言葉の記憶や、方言差として認識できる範囲が広いため、比較的スムーズに会話が進むこともあるようです。
しかし、若い世代になるほど、韓国では新しい外来語や流行語が次々と生まれる一方、北朝鮮ではそうした言葉が浸透していないため、言葉のギャップは大きくなる傾向にあります。前述した頭音法則の違いや、特定の単語の使い方の違いも、誤解を生む原因となり得ます。
特に専門的な話題や抽象的な概念について話す場合、あるいは感情の機微を伝えようとする場合には、言葉の壁を感じることが多くなると考えられます。
誤解を生みやすい表現や注意点
意思疎通の際に誤解を生みやすいのは、以下のような点です。
- 外来語の不通: 韓国側が日常的に使う外来語(例:ストレス、アレルギー、ティッシュペーパーなど)が北朝鮮側には全く通じない。
- 同じ単語でも意味やニュアンスが異なる場合: 例えば、韓国で「아가씨(アガシ)」は若い未婚女性を指す一般的な言葉ですが、北朝鮮ではかつて酌婦などを指す否定的な意味合いで使われたこともあり、誤解を招く可能性があります(現在は北朝鮮でも「若い女性」の意味で使われることが増えているようです)。
- 社会体制や生活様式の違いからくる語彙のズレ: 資本主義社会の概念(例:マーケティング、ブランド)や、北朝鮮にはない事物(例:コンビニエンスストア、スマートフォンアプリの固有名詞)に関する言葉は通じにくいでしょう。
- イントネーションや表現の強さによる誤解: 北朝鮮の言葉の力強い抑揚が、韓国人にとっては威圧的に感じられたり、逆に韓国人の柔らかい物言いが北朝鮮人には意図が不明確に聞こえたりする可能性も考えられます。
政治的に敏感な話題や、相手の体制を批判するような言葉遣いは、当然ながら避けるべきです。お互いの文化や立場を尊重し、丁寧に言葉を選びながらコミュニケーションを取ることが重要になります。
まとめ:韓国語と北朝鮮の言葉の違いを理解して、より深く文化を知ろう
今回は、韓国と北朝鮮の言葉の違いについて、頭音法則、漢字語と固有語、外来語の扱い、さらには社会体制を反映した語彙や日常会話のニュアンスまで、7つのポイントに分けて詳しく見てきました。
同じ「朝鮮語(韓国語)」というルーツを持ちながらも、70年以上の分断によって、発音、語彙、表現に至るまで、多くの面で独自の変化を遂げてきたことがお分かりいただけたかと思います。これらの違いは、単に言葉の表面的な差に留まらず、それぞれの社会のあり方、文化、そして人々の生活様式までをも反映しています。
北朝鮮の言語には、日本語と発音が似ている漢字語(例:료리 – 料理)がそのまま残っているなど、韓国語とはまた違った親近感を覚える部分もあるかもしれません。韓流ドラマや映画を観る際に、今日ご紹介したような言語の違いに少し耳を傾けてみると、登場人物の背景や物語の深みがより一層増すことでしょう。
言葉の違いを知ることは、朝鮮半島の現状に対する理解を深め、多様な文化に触れるための一歩となります。この記事が、皆さんの知的好奇心を満たし、韓国語や朝鮮半島の文化への関心をさらに高めるきっかけとなれば幸いです。