「この前のテスト、あまりよくできませんでした」
「今日のランチは、食べないでおこうかな…」
日常会話や学習中に、韓国語で「~しない」「~ではない」と言いたい場面は頻繁に訪れます。その時、「안」と「~지 않다」のどちらを使うべきか迷った経験はありませんか?
なんとなく短い単語には「안」、長い単語には「~지 않다」を使っているけれど、本当にそれで合っているのか不安に感じる方も多いでしょう。実は、この二つの表現には、文法的なルールだけでなく、話者の意志やニュアンス、文体に至るまで、明確な違いが存在します。
この記事では、韓国語の否定表現「안」と「~지 않다」の使い分けを徹底的に解説します。基本的な使い方から、ネイティブが自然に使い分けるための5つの重要ポイント、さらにはもう一つの否定形「못」との違いまで、豊富な例文とともに分かりやすく掘り下げていきます。この記事を読み終える頃には、あなたの韓国語はより正確で、表現力豊かなものになっているはずです。
韓国語の否定表現「안」と「~지 않다」の基本
まずは、それぞれの基本的な形と使い方からおさらいしましょう。ここをしっかり押さえることが、応用への第一歩です。
短い否定文「안」の使い方と豊富な例文
「안」は、動詞や形容詞の前に置くだけで簡単に否定文を作れる、非常に便利な表現です。「안」は「아니(違う)」の縮約形で、日常会話で頻繁に使われます。
基本形: 안 + 動詞/形容詞
具体的な例文を見てみましょう。
【動詞の例】
-
안 먹어요.(アン モゴヨ)
→ 食べません。 -
안 가요.(アン ガヨ)
→ 行きません。 -
안 봐요.(アン 봐요)
→ 見ません。
【形容詞の例】
-
안 예뻐요.(アン イェッポヨ)
→ 可愛くありません。 -
안 비싸요.(アン ビッサヨ)
→ 高くありません。 -
안 더워요.(アン ドウォヨ)
→ 暑くありません。
長い否定文「~지 않다」の使い方と豊富な例文
「~지 않다」は、動詞や形容詞の語幹に付けて使用する否定表現です。「안」に比べて、より客観的で少し硬い印象を与えます。
基本形: 動詞/形容詞の語幹 + 지 않다
「~지 않다」を使った例文を見てみましょう。
【動詞の例】
-
먹지 않아요.(モクチ アナヨ)
→ 食べません。 -
가지 않아요.(カジ アナヨ)
→ 行きません。 -
보지 않아요.(ポジ アナヨ)
→ 見ません。
【形容詞の例】
-
예쁘지 않아요.(イェップジ アナヨ)
→ 可愛くありません。 -
비싸지 않아요.(ピッサジ アナヨ)
→ 高くありません。 -
덥지 않아요.(トプチ アナヨ)
→ 暑くありません。
ご覧の通り、日本語訳はどちらも同じ「~しません」「~くありません」となります。では、ネイティブはどのようにこれらを使い分けているのでしょうか?次のセクションで、その核心に迫ります。
【重要】「안」と「~지 않다」の決定的な使い分けポイント5選
会話では「안」、文章では「~지 않다」が基本ですが、例外もたくさんあります。
ここからが本題です。以下の5つのポイントを理解すれば、あなたも「안」と「~지 않다」を自在に使いこなせるようになります。
ポイント1:文法の制約 – 「안」が使えない単語を深掘り
最も重要なルールの一つが、「안」は全ての単語に使えるわけではないという点です。特に以下のケースでは「안」を使うと不自然、あるいは間違いになるため、「~지 않다」を使う必要があります。
「안」が使えない代表的なケース
- 「名詞 + 하다」で構成される動詞
- 一部の長い形容詞や複合語
- 「좋아하다(好きだ)」「싫어하다(嫌いだ)」などの感情を表す一部の動詞
「名詞 + 하다」の動詞
「勉強する(공부하다)」「仕事する(일하다)」「電話する(전화하다)」のように、漢字語などの名詞に「하다」が付いてできた動詞の場合、「안」を動詞の前に置くことはできません。
間違い (×)
× 어제 안 공부했어요. (オジェ アン コンブヘッソヨ)
× 지금 안 일해요. (チグム アン イレヨ)
正しい (○)
○ 어제 공부(를) 안 했어요. (オジェ コンブルル アネッソヨ)
○ 지금 일(을) 안 해요. (チグム イルル アネヨ)
この場合、名詞と「하다」を切り離し、「(名詞)을/를 안 하다」という形にするか、シンプルに「(動詞の語幹)지 않다」の形を使います。
↓
어제 공부하지 않았어요. (オジェ コンブハジ アナッソヨ)
지금 일하지 않아요. (チグム イルハジ アナヨ)
【注意】「名詞 + 하다」が形容詞の場合は「안」を使える!
「중요하다 (重要だ)」「필요하다 (必要だ)」「행복하다 (幸せだ)」などの形容詞の場合は、名詞と切り離さず、前に「안」を置くことができます。
○ 이 문제는 안 중요해요. (イ ムンジェヌン アン ジュンヨヘヨ) – この問題は重要ではありません。
○ 돈은 안 필요해요. (トヌン アン ピリョヘヨ) – お金は必要ありません。
一部の長い形容詞や複合語
「아름답다 (美しい)」「새롭다 (新しい)」「자랑스럽다 (誇らしい)」など、語幹が長い、あるいは複合的な成り立ちを持つ形容詞には、「안」を付けると非常に不自然に聞こえます。このような単語は「~지 않다」で否定するのが一般的です。
× 경치가 안 아름다워요.
○ 경치가 아름답지 않아요. (キョンチガ アルムダプチ アナヨ) – 景色が美しくありません。
× 그 방법은 안 새로워요.
○ 그 방법은 새롭지 않아요. (ク パンボブン セロプチ アナヨ) – その方法は新しくありません。
ポイント2:ニュアンスの違い – 意志の強弱を場面別に解説
文法的な制約がない場合、どちらの表現を選ぶかで話者の「意志」の強さを表現し分けることができます。
- 「안」: 話者の「~するつもりはない」という強い意志や、単純な事実の否定を直接的に表現します。
- 「~지 않다」: ある事実を客観的かつ丁寧に否定するニュアンスが強くなります。意志の否定というよりは、状態の否定に使われることが多いです。
例を見てみましょう。医者に行くように勧められた場面を想像してください。
A: 감기 걸렸어요? 병원에 가세요. (風邪ひきましたか?病院に行ってください。)
Bさん(意志が強い):
내일 병원에 안 가요. (ネイル ピョンウォネ アンガヨ)
→ (行きたくないから)明日病院には行きません。という強い意志を感じさせます。
Cさん(客観的):
내일 병원에 가지 않아요. (ネイル ピョンウォネ カジ アナヨ)
→ (予定があって行けないなど)明日病院には行かない、という事実を客観的・丁寧に述べている印象です。
ポイント3:文体の違い – 口語的 vs 文語的表現の使い分け
これは非常に分かりやすい使い分けのポイントです。
- 「안」: 主に日常会話(口語)で使われます。友人や家族との会話、SNSなど、カジュアルな場面で自然に響きます。
- 「~지 않다」: ニュース、論文、公式なスピーチ、書籍などの書き言葉(文語)で好んで使われます。よりフォーマルで、硬い印象を与えます。
口語的な表現 (友人との会話)
A: 오늘 영화 보러 갈래? (今日、映画見に行かない?)
B: 미안, 오늘은 안 갈래. 피곤해서 그냥 쉴게. (ごめん、今日は行かない。疲れたから休むよ。)
文語的な表現 (ニュース記事)
정부의 새로운 정책에 대해, 국민 대다수는 지지하지 않는 것으로 나타났습니다. (政府の新しい政策に対し、国民の大多数は支持していないことが明らかになりました。)
もちろん、会話で「~지 않다」を使うこともありますが、その場合は少し丁寧でかしこまった響きになります。
ポイント4:否定する範囲の違い – 部分否定と全体否定を分かりやすく
副詞、特に「다(みんな、全部)」と一緒に使う場合、「안」と「~지 않다」では否定される範囲の解釈が異なることがあります。これは中級者以上が間違いやすいポイントです。
例文:모임에 다 안 갔다. vs 모임에 다 가지 않았다.
どちらも「集まりにみんな行かなかった」と訳せそうですが、ニュアンスが異なります。
모임에 다 안 갔다.
これは「全員、行かなかった」(全体否定)と解釈するのが一般的です。参加者はゼロです。
(Aさん→行かなかった, Bさん→行かなかった, Cさん→行かなかった)
모임에 다 가지 않았다.
これは2通りの解釈が可能です。
1. 「全員、行かなかった」(全体否定)
2. 「全員が行ったわけではない」(部分否定)
後者の「部分否定」として解釈されることが多く、何人かは行ったが、全員ではなかったという意味合いになります。
(Aさん→行った, Bさん→行った, Cさん→行かなかった)
したがって、「一人も行かなかった!」と明確に伝えたい場合は「아무도 안 갔다 (誰も行かなかった)」を使うか、「다 안 갔다」と言う方が誤解が少ないでしょう。「全員参加ではなかった」と伝えたい場合は「다 가지 않았다」が適切です。
ポイント5:単語の長さによる使い分け – 初心者向けの簡単な見分け方
文法やニュアンスが複雑で難しいと感じる初心者の方へ。一つの目安として「単語の音節の長さ」で判断する方法があります。
- 短い単語(1~2音節): 「안」を使うと自然なことが多い。(例:안 가다, 안 먹다, 안 좋다)
- 長い単語(3音節以上): 「~지 않다」を使う方が響きが良い場合がある。(例:복잡하지 않다, 위험하지 않다)
これは絶対的なルールではありませんが、迷った時のヒントになります。例えば、「복잡하다(複雑だ)」を「안 복잡하다」と言うと、少し子供っぽい、あるいは不自然に聞こえることがあります。「복잡하지 않다」の方が一般的でスムーズです。
もっと知りたい!韓国語のもう一つの否定形「못」との違い
「食べない」のか、それとも「食べられない」のか。この違いは大きいです。
「안」と「~지 않다」を学んでいると、必ずと言っていいほど登場するのがもう一つの否定形「못」です。これも非常に重要なので、違いを明確にしておきましょう。
「못」の意味と基本的な使い方 – 「できない」という能力の否定
「못」は、動詞の前に付き、「~できない」という能力や状況による不可能を表します。発音は[몯]となり、パッチムの「ㅅ」は「ㄷ」の音になります。
【못 の使い方】
-
못 가요. (モッ カヨ)
→ (時間がなくて、道が分からなくて) 行けません。 -
운전을 못 해요. (ウンジョヌル モッ テヨ)
→ (免許がない、スキルがない) 運転ができません。 -
김치를 못 먹어요. (キムチルル モッ モゴヨ)
→ (辛すぎて、アレルギーで) キムチを食べられません。
※「名詞+하다」動詞の場合、「못」は「하다」の前に置きます。(例:공부 못 하다, 일 못 하다)
「안」 vs 「못」- 意志の否定か、能力の否定か
この二つの違いは決定的です。間違えると、大きな誤解を生む可能性があります。
例:「술을 마시다 (お酒を飲む)」
술을 안 마셔요. (スルル アン マショヨ)
→ (意志) お酒を飲みません。健康のために飲まないと決めている、単に飲みたくない、などの意志を表します。
술을 못 마셔요. (スルル モッ マショヨ)
→ (能力・体質) お酒を飲めません。体質的にお酒に弱い、医者に止められている、車で来たから飲めない、などの状況を表します。
このように、「안」は「自分の意志でしない」こと、「못」は「したくても何らかの理由でできない」こと、という根本的な違いがあります。
実践練習!場面別で見る「안」と「~지 않다」の使い分けクイズ
ここまでの内容を理解できたか、簡単なクイズで力試しをしてみましょう!カッコ内には「안」と「~지 않다」のどちらがより自然でしょうか?
Q1. 友達とのカジュアルな会話
A: 너 숙제 다 했어? (君、宿題全部終わった?)
B: 아니, 아직 ( ______ ) 했어. 너무 어려워. (ううん、まだ( )してない。すごく難しい。)
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答え: 안
解説:「숙제(를) 안 했어」となります。「숙제하다」は「名詞+하다」動詞なので、「안」は「하다」の直前に来ます。また、友人とのカジュアルな会話なので、口語的な「안」が非常に自然です。「숙제하지 않았어」も文法的には正しいですが、少し硬い印象になります。
Q2. ニュース記事やレポートの読解
해당 지역의 대기오염 수치는 기준치를 초과( ______ ). (当該地域の大気汚染数値は、基準値を超過( )。)
答えと解説を見る
答え: 하지 않았다
解説:「초과하지 않았다」となります。ニュース記事やレポートのような文語体(書き言葉)では、客観的でフォーマルな「~지 않다」が好まれます。「안 초과했다」とは通常言いません。
Q3. 自分の強い意志や決意を伝えたい時
上司:このプロジェクト、引き受けてくれないか? (이 프로젝트 맡아줄 수 없을까?)
あなた:죄송합니다. 그 일은 절대 ( ______ ) 하겠습니다. (申し訳ありません。その仕事は絶対に( )します。)
答えと解説を見る
答え: 안
解説:「절대 안 하겠습니다」となります。「絶対にやらない」という強い拒絶の意志を示す場面では、「안」が非常に効果的です。「절대 하지 않겠습니다」も使えますが、「안」を使った方がより直接的で強い意志が伝わります。
まとめ:ネイティブに一歩近づく否定表現マスターへの道
いかがでしたか?日本語では同じ「~しない」でも、韓国語では「안」「~지 않다」そして「못」を使い分けることで、表現の豊かさが格段に上がることがお分かりいただけたと思います。
今日のポイントまとめ
- 「안」は口語的で、短い単語に使い、話者の強い意志を表すのに効果的。
- 「~지 않다」は文語的で、長い単語や「名詞+하다」動詞にも使え、客観的な事実を丁寧に述べる時に使う。
- 文法的な制約が最優先。「안」が使えない単語(공부하다等)は必ず「공부 안 하다」か「공부하지 않다」の形にする。
- 副詞「다」と使う時、「~지 않다」は「部分否定」になる可能性に注意する。
- 「못」は能力や状況的に「できない」ことを表し、「안(しない)」とは意味が全く異なる。
最初は少し難しく感じるかもしれませんが、意識してドラマのセリフを聞いたり、作文で使ってみたりすることで、徐々に感覚が身についていきます。日本語と似ているようで奥が深い韓国語、この違いをマスターして、ぜひ表現の幅を広げてみてください!
一つ一つの表現をマスターすることが、流暢な韓国語への道です。

