韓国語の受動態「被動詞」を徹底解説!-이히리기- / -아어여지다 の違いと例文まとめ
「~が(~によって)…される」「~が見える」「~が聞こえる」のように、主語が他の何かから動作を受けたり、自然にそうなったりする状態を表す表現を受動態(受け身)と言いますね。日本語では動詞に「れる」「られる」を付けて表現しますが、韓国語ではどのように表現するのでしょうか?
韓国語の受動態は「피동사 (ピドンサ:被動詞)」と呼ばれ、主に2つの作り方があります。今回は、韓国語学習者がつまずきやすいこの被動詞について、作り方、使い方、そして注意点などを豊富な例文とともに詳しく解説していきます。
目次
韓国語の受動態「被動詞(피동사)」とは?
被動詞は、主語が他の動作主から動作・作用を受けることを表す動詞です。能動態(능동태:ヌンドンテ)の文(主語が動作をする文)と対比して理解すると分かりやすいでしょう。
例:
- 能動態:경찰이 도둑을 잡았다. (警察が泥棒を捕まえた。)
- 受動態:도둑이 경찰에게 잡혔다. (泥棒が警察に捕まえられた。)
日本語の「れる」「られる」との対応関係
多くの場合、日本語の受身形「~れる」「~られる」に対応しますが、韓国語の被動詞には、日本語の「見える」「聞こえる」のような自発(自然にそうなる)や、「(ペンが)よく書ける」のような可能の意味合いで使われるものもあります。文脈によって意味を判断することが大切です。
被動詞が使われる主な場面
被動詞は主に以下のような場面で使われます。
- 動作主を明示する必要がない、または不明な場合:「문이 닫혔다. (ドアが閉まった。)」
- 動作を受ける対象(主語)を強調したい場合:「그 책은 많은 사람들에게 읽혔다. (その本は多くの人々に読まれた。)」
- 被害や迷惑を表す場合:「모기에게 물렸다. (蚊に刺された。)」
- 自発(自然にそうなる)を表す場合:「멀리 산이 보인다. (遠くに山が見える。)」
作り方①:接尾辞「-이- / -히- / -리- / -기-」を付けるタイプ
被動詞の作り方の一つ目は、能動詞の語幹に特定の接尾辞「-이- (イ)」「-히- (ヒ)」「-리- (リ)」「-기- (キ)」のいずれかを付ける方法です。どの接尾辞が付くかは動詞によって決まっており、残念ながら明確な規則性はありません。そのため、基本的な被動詞は単語として覚える必要があります。

「-이히리기-」が付くことで、動作を受ける、または自然にそうなる意味を表します。
接尾辞が付く動詞の傾向(ただし規則性は低い)
完全な規則ではありませんが、参考として以下のような傾向が見られることがあります。
- 語幹末が「ㅅ, ㅊ, ㅋ, ㅌ」など → 「-이-」が付きやすい? (例: 놓다 → 놓이다)
- 語幹末が「ㄱ, ㅂ, ㅈ」など → 「-히-」が付きやすい? (例: 잡다 → 잡히다)
- 語幹末が「ㄷ, ㄹ」など → 「-리-」が付きやすい? (例: 듣다 → 들리다)
- 語幹末が「ㄴ, ㅁ, ㅇ」など → 「-기-」が付きやすい? (例: 안다 → 안기다)
しかし、例外も非常に多いため、あくまで目安程度に考え、個々の動詞を覚えていくのが確実です。
※注意:使役動詞(~させる)にも同じ形の接尾辞を使うものがあり(例:보다 見る → 보이다 見せる)、形が同じでも意味が異なる場合があります。文脈で判断しましょう。
「-이-」が付く被動詞:例文と解説
【主な動詞の例】
- 보다 (ポダ:見る) → 보이다 (ポイダ:見える)
- 쓰다 (スダ:書く) → 쓰이다 (スイダ:書かれる)
- 놓다 (ノタ:置く) → 놓이다 (ノイダ:置かれる)
- 쌓다 (ッサタ:積む) → 쌓이다 (ッサイダ:積もる、積まれる)
- 섞다 (ソクタ:混ぜる) → 섞이다 (ソッキダ:混じる、混ぜられる)
- 깎다 (ッカクタ:削る、値切る) → 깎이다 (ッカッキダ:削られる、値切られる)
- 바꾸다 (パックダ:変える) → 바뀌다 (パックィダ:変わる、変えられる)
- 묶다 (ムクタ:縛る) → 묶이다 (ムッキダ:縛られる)
- 파다 (パダ:掘る) → 파이다 (パイダ:掘られる)
- 덮다 (トプタ:覆う) → 덮이다 (トピダ:覆われる)
- 헤이다 (ヘイダ:擦り切れる) ※「해지다」の形でよく使う
【例文】
창밖으로 아름다운 설경이 보여요.
窓の外に美しい雪景色が見えます。이 책상 위에는 중요한 서류가 놓여 있으니 만지지 마세요.
この机の上には重要な書類が置かれていますので、触らないでください。눈이 많이 와서 길이 눈으로 덮였다.
雪がたくさん降って、道が雪で覆われた。마감 시간이 갑자기 바뀌어서 당황했다.
締め切り時間が突然変わって(変えられて)慌てた。그의 목소리에는 슬픔이 섞여 있었다.
彼の声には悲しみが混じっていた。
「-히-」が付く被動詞:例文と解説
【主な動詞の例】
- 먹다 (モクタ:食べる) → 먹히다 (モキダ:食べられる)
- 읽다 (イルタ:読む) → 읽히다 (イルキダ:読まれる)
- 잡다 (チャプタ:捕まえる) → 잡히다 (チャピダ:捕まる、捕まえられる)
- 밟다 (パルタ:踏む) → 밟히다 (パルピダ:踏まれる)
- 접다 (チョプタ:折る) → 접히다 (チョピダ:折られる、畳まれる)
- 닫다 (タッタ:閉める) → 닫히다 (タチダ:閉まる、閉められる)
- 묻다 (ムッタ:埋める) → 묻히다 (ムチダ:埋められる、埋まる)
- 박다 (パクタ:打ち込む) → 박히다 (パキダ:刺さる、打ち込まれる)
- 얹다 (オンタ:載せる) → 얹히다 (オンチダ:載せられる)
- 막다 (マクタ:塞ぐ) → 막히다 (マキダ:塞がる、詰まる)
- 업다 (オプタ:おんぶする) → 업히다 (オッピダ:おんぶされる)
- 뽑다 (ッポプタ:抜く、選ぶ) → 뽑히다 (ッポピダ:抜かれる、選ばれる)
【例文】
토끼가 늑대에게 먹혔어요.
ウサギがオオカミに食べられました。그의 소설은 전 세계에서 널리 읽히고 있다.
彼の小説は全世界で広く読まれている。범인이 드디어 경찰에 잡혔다.
犯人がついに警察に捕まった。갑자기 문이 바람에 세게 닫혔다.
突然ドアが風で強く閉まった。차가 막혀서 약속 시간에 늦을 것 같아요.
車が混んで(道が塞がって)約束の時間に遅れそうです。
「-리-」が付く被動詞:例文と解説
【主な動詞の例】
- 물다 (ムルダ:噛む) → 물리다 (ムルリダ:噛まれる)
- 열다 (ヨルダ:開ける) → 열리다 (ヨルリダ:開く、開かれる)
- 밀다 (ミルダ:押す) → 밀리다 (ミルリダ:押される、滞る)
- 듣다 (トゥッタ:聞く) → 들리다 (トゥルリダ:聞こえる)
- 풀다 (プルダ:解く) → 풀리다 (プルリダ:解ける、解放される)
- 팔다 (パルダ:売る) → 팔리다 (パルリダ:売れる)
- 걸다 (コルダ:掛ける) → 걸리다 (コルリダ:掛かる、引っかかる、(病気に)かかる)
- 눌다 (ヌルダ:押す) → 눌리다 (ヌルリダ:押される)
- 몰다 (モルダ:追う、運転する) → 몰리다 (モルリダ:追われる、集中する)
- 뚫다 (ットゥルタ:開ける、貫く) → 뚫리다 (ットゥルリダ:開けられる、貫かれる)
- 날다 (ナルダ:飛ぶ) → 날리다 (ナルリダ:飛ばされる、舞う)
【例文】
어젯밤에 모기한테 물려서 너무 가려워요.
昨夜、蚊に刺されてとてもかゆいです。드디어 마음의 짐이 풀린 것 같다.
やっと心の荷が解けたようだ。그 가게의 신상품은 나오자마자 다 팔렸다.
その店の新商品は出るやいなや全部売れた。어디선가 아름다운 음악 소리가 들려온다.
どこからか美しい音楽の音が聞こえてくる。서류가 너무 많아서 일이 밀려 있다.
書類がとても多くて仕事が滞っている。
「-기-」が付く被動詞:例文と解説
【主な動詞の例】
- 안다 (アンタ:抱く) → 안기다 (アンギダ:抱かれる)
- 끊다 (クンタ:切る) → 끊기다 (クンキダ:切られる、途絶える)
- 쫓다 (ッチョッタ:追う) → 쫓기다 (ッチョッキダ:追われる)
- 씻다 (ッシッタ:洗う) → 씻기다 (ッシッキダ:洗われる)
- 감다 (カムタ:巻く、(目を)閉じる) → 감기다 (カムギダ:巻かれる、(目に)まとわりつく)
- 찢다 (ッチッタ:裂く) → 찢기다 (ッチッキダ:裂かれる)
- 빼앗다 (ッペアッタ:奪う) → 빼앗기다 (ッペアッキダ:奪われる)
- 읽다 (イルタ:読む) → 읽기다 (イルキダ:読ませる – 使役の意味が強いが文脈で被動的にも)
【例文】
아기는 엄마 품에 안겨 잠이 들었다.
赤ちゃんはお母さんの胸に抱かれて眠りについた。빚쟁이에게 쫓기는 신세가 되었다.
借金取りに追われる身の上になった。태풍 때문에 전화선이 끊겼다.
台風のせいで電話線が切れた(途絶えた)。마음이 아파서 가슴이 찢기는 것 같다.
心が痛くて胸が張り裂けそうだ(裂かれるようだ)。지갑을 빼앗겨서 경찰에 신고했다.
財布を奪われて警察に通報した。
作り方②:補助動詞「-아/어/여지다」を付けるタイプ
被動詞のもう一つの作り方は、動詞の語幹に補助動詞「-아/어/여지다」を付ける形です。こちらは接尾辞タイプよりも多くの動詞に適用でき、より広く使われる傾向があります。
作り方:
- 動詞の語幹の最後の母音が ㅏ, ㅗ の場合 → -아지다
- 動詞の語幹の最後の母音が ㅏ, ㅗ 以外 の場合 → -어지다
- 하다動詞の場合 → -여지다 (-해지다 の形になる)

「-아/어/여지다」は「~される」という受動や、「~くなる」という状態変化を表します。
「-아/어/여지다」の意味合い:「〜される」「〜くなる(状態変化)」
「-아/어/여지다」には、主に二つの意味合いがあります。
- 被動(~される): 他の動作主によって動作を受けることを表します。
- 状態変化(~くなる、〜になる): ある状態に自然になったり、変化したりすることを表します。形容詞にも付きます。
どちらの意味になるかは文脈で判断します。
被動の意味での使い方:例文と解説
【主な動詞の例】
- 만들다 (マンドゥルダ:作る) → 만들어지다 (マンドゥロジダ:作られる)
- 주다 (チュダ:与える) → 주어지다 (チュオジダ:与えられる)
- 이루다 (イルダ:成し遂げる) → 이루어지다 (イルオジダ:成し遂げられる、叶う)
- 짓다 (チッタ:建てる) → 지어지다 (チオジダ:建てられる)
- 밝히다 (パルキダ:明らかにする) → 밝혀지다 (パルキョジダ:明らかにされる)
- 믿다 (ミッタ:信じる) → 믿어지다 (ミドジダ:信じられる)
- 느끼다 (ヌッキダ:感じる) → 느껴지다 (ヌッキョジダ:感じられる)
- 잊다 (イッタ:忘れる) → 잊혀지다 (イッチョジダ ※잊어지다の強調形:忘れられる)
- 쓰다 (スダ:書く) → 써지다 (ッソジダ:書かれる、書ける) ※後述
- 깨다 (ッケダ:壊す) → 깨지다 (ッケジダ:壊れる)
- 찢다 (ッチッタ:裂く) → 찢어지다 (ッチジョジダ:破れる)
【例文】
이 건물은 100년 전에 지어졌다고 합니다.
この建物は100年前に建てられたそうです。사건의 진실이 드디어 밝혀졌다.
事件の真実がついに明らかにされた。오랜 노력 끝에 드디어 꿈이 이루어졌다.
長年の努力の末、ついに夢が叶った(成し遂げられた)。그에게는 새로운 기회가 주어졌다.
彼には新しい機会が与えられた。그녀가 한 말이 아직도 믿어지지 않아요.
彼女が言った言葉がまだ信じられません。오래된 종이라서 만지니 금방 찢어졌다.
古い紙なので触ったらすぐに破れた。
状態変化の意味での使い方:例文と解説
形容詞や一部の動詞に付き、「〜(の状態)になる」という意味を表します。これは厳密には被動態ではありませんが、形が同じなので混同しないようにしましょう。
【主な例】
- 예쁘다 (イェップダ:きれいだ) → 예뻐지다 (イェッポジダ:きれいになる)
- 나쁘다 (ナップダ:悪い) → 나빠지다 (ナッパジダ:悪くなる)
- 없다 (オプタ:ない) → 없어지다 (オプソジダ:なくなる)
- 많다 (マンタ:多い) → 많아지다 (マナジダ:多くなる)
- 펴다 (ピョダ:広げる) → 펴지다 (ピョジダ:広がる)
- 구부리다 (クブリダ:曲げる) → 구부러지다 (クブロジダ:曲がる)
- 꺼지다 (ッコジダ:消える) ※이미지参考
【例文】
요즘 운동을 열심히 해서 건강해졌어요.
最近運動を頑張って健康になりました。걱정했던 문제가 다행히 없어졌다.
心配していた問題が幸いにもなくなった。날씨가 점점 따뜻해지고 있어요.
天気がだんだん暖かくなっています。
「-이히리기-」と「-아어여지다」の使い分け・違いは?
どちらの形を使えば良いのか、迷うことがありますね。いくつかのポイントがあります。
両方の形が存在する場合(例:쓰이다 vs 써지다)のニュアンスの違い
動詞によっては、「-이히리기-」と「-아/어/여지다」の両方の形が存在し、ニュアンスが異なる場合があります。
例:「쓰다 (書く)」
- 쓰이다 (スイダ): 主に「書かれる」という純粋な被動の意味で使われます。「이 글은 유명한 작가에 의해 쓰였다. (この文は有名な作家によって書かれた。)」
- 써지다 (ッソジダ): 「書かれる」という意味でも使われますが、記事中の例文のように「(ペンなどが)よく書ける」という可能や自発に近い意味で使われることも多いです。「이 펜은 정말 잘 써져요. (このペンは本当によく書けます。)」
このように、文脈によって使い分けが必要な場合があります。
「-아어여지다」の方がより広く使われる傾向
一般的に、「-이히리기-」を付けられる動詞は限られていますが、「-아/어/여지다」はより多くの動詞に付けることができます。そのため、新しい被動表現を作る際や、どちらを使うか迷った際には、「-아/어/여지다」の方が使われる頻度が高い傾向があります。
二重被動(이중 피동)は避ける
注意点として、「-이히리기-」と「-아/어/여지다」を両方重ねて使う「二重被動(이중 피동:イジュン ピドン)」は、文法的に誤りとされています。
例:
- 잡히어지다 (X) ← 잡히다 (O) または 잡아지다 (△文脈による)
- 잊혀지다 (△/O) ※ 「잊어지다」の強調形として定着し、現在では許容される傾向にありますが、元々は二重被動とされました。基本的には避けるのが無難です。
- 믿겨지다 (X) ← 믿어지다 (O) または 믿기다 (O)
どちらか一方の形を使うようにしましょう。
被動詞をマスターするための学習ポイント
被動詞は少し複雑に感じるかもしれませんが、以下の点を意識して学習を進めましょう。
基本的な被動詞は丸ごと覚えるのが近道
特に「-이히리기-」が付くタイプの被動詞は、能動詞とセットで単語として覚えてしまうのが最も効率的です。よく使われる基本的な被動詞(보이다, 들리다, 열리다, 닫히다, 잡히다, 팔리다 など)から確実に覚えていきましょう。
能動態の文と受動態の文を書き換える練習
能動態の文を受動態に、逆に受動態の文を能動態に書き換える練習をすることで、助詞の使い方(「~が」→「~に/~によって(에게/한테/에 의해)」など)や文全体の構造への理解が深まります。
多くの例文に触れてニュアンスを掴む
教科書だけでなく、ドラマ、映画、書籍、ニュース記事など、実際の韓国語の用例にたくさん触れることが重要です。どのような文脈で、どのようなニュアンスで被動詞が使われているかを意識することで、自然な使い方が身についていきます。
まとめ:被動詞を理解して韓国語の表現力を豊かに!
今回は、韓国語の受動態表現である「被動詞」について、2つの作り方「-이히리기-」タイプと「-아/어/여지다」タイプを中心に解説しました。
どの接尾辞が付くか、どちらの形を使うかなど、覚えるべき点も多いですが、基本的なルールとよく使われる被動詞をマスターすれば、表現の幅がぐっと広がります。「~される」だけでなく、「見える」「聞こえる」「~できる」「~くなる」といった多様なニュアンスを表すことができる便利な表現です。
焦らず、一つ一つの動詞と例文を確認しながら、着実に身につけていきましょう。この記事が、皆さんの韓国語学習の一助となれば幸いです。