1987年の韓国民主化闘争とは?

  1. 韓国歴史・文化

1980年代、韓国は軍事独裁政権下にありましたが、民主化を求める運動が高まっていました。
1987年、ソウル大学の学生である朴鍾哲さんが警察の取り調べ中に死亡するという事件が起きこの事件をきっかけに、韓国全土で民主化を求める大規模な運動が起こりました。

日本がバブル景気に沸いていた1980年代、お隣の韓国では歴史的転換点となる出来事が生じていました。

今回は、1987年に起きた韓国民主化闘争を取り上げてみたいと思います。

1987年の韓国民主化闘争とは?

全斗煥の軍事独裁政権

当時、韓国では軍人だった朴正煕パク・チョンヒ)大統領が1979年に暗殺され、「ソウルの春」と呼ばれる民主化を求める運動が大学生を中心に盛り上がりを見せていました。

1980年5月には光州市での民主化運動を軍が弾圧するという光州事件も発生します。

その軍の実権を掌握していた全斗煥(チョン・ドゥファン)が同年9月に間接選挙によって大統領に就任して、軍事独裁体制を敷いたため、韓国は激動の時代に突入したのです。

朴鍾哲拷問致死事件

1987年1月には、学生運動に参加していたソウル大学の学生である朴鍾哲(パク・ジョンチョル)さんが治安本部によって南営洞の対共分室に連行され、取り調べを受けている最中に死亡するという事件が起きました。

緊急往診として医師が呼ばれ、刑事から水の飲み過ぎで倒れたとの説明を受けましたが、状況から嘘であることを見抜いた医師は、司法解剖されることを願って死亡診断書に死因未詳と書きます。

その後、医師はトイレで新聞記者に会い、事件が発生したことを伝えます。そのため、翌日の新聞には「警察で取り調べを受けた大学生ショック死」というタイトルの記事が掲載されることになったのです。

韓国の暗い部屋にある椅子2脚とテーブル。

警察の証拠隠滅工作

警察は記者会見を開きましたが、そこで治安本部長は「机をパンと叩いたらオッと言って死んだ」という、とんでもない発表を行います。

さらに捜査官は証拠隠滅を図るため、ソウル地検の公安部長のところに遺体の火葬処理の許可申請に行きます。

しかし、公安部長は家族の承諾もなく火葬を行おうとしていることを不審に思い、直感で拷問死を疑い、司法解剖することにしました。

その結果、水を用いた拷問により亡くなったという事実が明らかになり、治安本部もそのことを認めました。

しかし、水責めには実際は5人の捜査官が関わっていたにもかかわらず、治安本部が逮捕したのは2人の捜査官のみでした。

容疑者の追加逮捕

そんな中、刑務所の保安係長は収監された2人と警察幹部との会話から、他に3人の容疑者がいることを知ります。

その情報を同じ刑務所に収監されていた民主化運動家が聞きつけ、手紙を書き、刑務官の助けを得ながら外部にいる民主化運動家に伝達します。

そして、数回手紙のやり取りが行われた後、5月にその情報を得た神父によって明洞聖堂でこの事件の全容を明らかにする声明が発表され、後に3人が追加逮捕されることになったのです。

6月民主抗争と民主化宣言

朴鍾哲拷問致死事件が起爆剤となり、民主化運動はどんどん拡大していきます。

そうした中、6月9日には戦闘警察が飛ばした催眠弾が、デモに参加していた延世大学の学生・李韓烈(イ・ハニョル)さんの後頭部に当たり、死亡するという事件が発生しました。

そして、この事件をきっかけに、学生はもちろんのことサラリーマンや商店主なども民主化運動を支持するようになります。

翌日の6月10日から20日もの間、6月民主抗争(6월민주항쟁)と呼ばれる民主化運動に全国で延べ約500万人が参加し、デモを続けました。

その結果、6月29日に当時の与党の代表委員だった盧泰愚(ノ・テウ)が民主化宣言を発表し、有権者が大統領を直接選挙で選べるようになり、民主化の実現へ向かっていったのです。

韓国の国旗の前で、投票箱に紙を入れている手。

韓国民主化闘争について描いた映画

韓国民主化闘争に対する韓国人の関心は高く、2017年には朴鍾哲拷問致死事件から6月民主抗争に至るまでを描いた映画『1987、ある闘いの真実』が公開され、観客動員数700万人を超える大ヒット作となりました。

この映画には、内務部治安本部対共捜査所長役をキム・ユンソク、ソウル地検公安部長役をハ・ジョンウ、大学生イ・ハニョル役をカン・ドンウォンが演じるなど、豪華なキャストが集結しました。

例文

では、会話の例文を見てみましょう。

미나:유리씨, ‘1987’이라는영화 봤어요?

ユリさん、『1987』という映画観ましたか。

유리:아니요. 어떤 영화인가요?

いいえ。どんな映画なんですか。

미나:박종철 고문치사사건부터 6월민주항쟁에 이르기까지의 과정을 그린 영화인데 보다가 너무 감동해서 울어버렸어요.

朴鍾哲拷問致死事件から6月民主抗争に至るまでの過程を描いた映画なんですが、観ていたらとても感動して、泣いてしまいました。

유리:그렇군요. 저도 그 영화를 꼭 봐야겠네요.

そうなんですね。私もその映画を必ず観ないといけませんね。

いかがでしたか。現在のような韓国の民主主義の発展の裏には、このような歴史的事件があったことをきちんと理解しておきたいですね。

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